内田涼「金目鯛は深海魚」(6日目)
陶芸家の深澤さんのご厚意で朝から伊豆高原にあるアートギャラリー「壺中天の本と珈琲」に連れて行ってもらう。稲取から車で20分ほど。稲取と伊豆高原がこんなに近いとは知らなかった。
壺中天はアトリエ・ワンが設計した建物で、結構ただならぬ存在感を放っている。もっと写真を撮ってくればよかった。
深澤さんはこのギャラリーのオーナーさんととても良い関係を築いていて、2月にはここでカップアンドソーサーを中心とした展示をすることが決まっている。今日はその打ち合わせ。わたしのことを紹介してくれるということで、図々しくも同行させてもらった。
まさかこのワーケーション企画でこんなギャラリーにたどり着くとは思っておらず、ポートフォリオを持ってきていなかったのだが、以前私の作品が偶然掲載されたPOPEYEという雑誌を深澤さんが偶然所持しており、今日は家からわざわざ持参してきてくれたのである。
自分のウェブサイト(よかったら見てください)は整備してあるが、やはりこういう時は手に取ってみてもらえるような物があったほうが良い。POPEYEと深澤さんに感謝である。
オーナーさんは、稲取での滞在後につくった作品をぜひうちで展示してくださいと言ってくれた。稲取の宿とかにも展示して同時開催みたいな感じにしてもおもしろいかもね、というような提案も。実現したらすごい。とりあえず東京に帰ったら作品をつくろうと思う。
それはともかく、壺中天ではちょうど展覧会が開催中で、壁には彫刻家の三澤憲司のドローイングや、菅木志雄が書いた三澤作品に関する直筆の批評原稿などが展示されていた!原稿には、三澤の制作は「そこにあるものや状態や空間のあり方を全部ひっくるめて意味化していく」ことである、とか、「“もの”がどのような世界においても“在るように見える”ということを認めている。」などと書かれていて非常に痺れた。
また、ちいさな彫刻作品もいくつか展示されており、《合体》のキャプションには三澤本人の言葉で「車窓より風景を眺めているとき自分が外界の世界への中心にいて、外側の風景が円運動をしているようにみえる」と書かれていたのがとても印象に残っている。
オーナーさんと美術の話ができたのも嬉しかった。奥のスペースには美術の本がびっしり並んでいて、なかなか手に入らないような大型本なんかもあり、一日中ここに居られるなと思った。
ちなみにオーナーさんも、稲取の小さな本屋さん「山田書店」推しである。深澤さんのアトリエに行ったあとに山田書店に寄って本を買って帰るのがひとつの楽しみになっていると言っていた。嬉しい。
近くにオーナーさんのパートナーの方が運営しているという巨大なアートギャラリーがあり(すごい夫婦だ)、そこでも三澤憲司の作品が展示されているというので、深澤さんに車で送ってもらうことに。ちなみに深澤さんは今回のホストの一員ではないので、完全にボランティアである。いや、ドリンク代を払ってくれたり、帰りに絶品の御稲荷さんを持たせてくれたりもしているので、もはやお母さんの領域だ。出世払いを目指しますので、楽しみにしていてください。
ちなみに巨大なアートギャラリーは「GAKUSHA」といって、本当に巨大だった。。
午後は食堂「おばあちゃんち」の経営者の森下さんの住むマンションへ伺って、源泉かけ流しの温泉を堪能させてもらった。タオルも着替えの洋服もサンダルも貸して頂き、森下さん流の温泉の入り方も伝授して頂き、マッサージも教えて頂いた。そして車で旅館まで送って頂いた…。森下さんもボランティアの域を超えたお母さんである。ボランティアが域を超えるとお母さんになるのかどうかちょっとこの表現はいまいちしっくりきていないが、いいにしよう。「いいにしよう」とは伊豆周辺でよく使われる言い回しで「今回はそういうかんじで良しとしておきましょう」というようなニュアンスです。
まえだ苑の夕食は信じられないくらい贅沢な金目鯛御膳で、金目鯛のしゃぶしゃぶまでつけて頂いた。今夜は稲取最後の夜ということでせっかくなので食事付きのプランにしておいた。
女将さんが隣のお席で「稲取でとれる金目鯛は本当に美味しいんですよ〜手前味噌ですが、本当に」と言っているのが聞こえた。どのお料理も本当に、おいしかったです。
一生分の金目鯛をおなかいっぱい食べて、夜更しをしてから就寝する。
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