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「3rd Party Cookie廃止撤回」のニュースを受け、デジタルマーケティング業界における意見や見解をまとめました。
いつも当社のIR noteをご覧いただきありがとうございます。
Googleが7月23日に「3rd Party Cookieの全面的な廃止の撤回」に関するニュースを発表し、速報として現時点での影響や今後の見通しに関する記事を7月25日に掲載いたしました。
Googleの発表から1週間程度経過し、業界全体から今後の見通しに対する様々なコメントが出てきましたので、今回の記事ではそのような業界全体の見通しに関して整理しましたので、ぜひご一読いただけますと幸いです。
3度目の延期後に方針の転換へ
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Google社は2019年からChromeブラウザにおける「3rd Party Cookie」廃止を発表後、3度の延期を発表してきましたが、今回の発表で全面的な廃止は断念する大きな方針転換をとりました。
大きな方針転換となった背景には、Googleが開発した代替ソリューションである「Privacy Sandbox」に対して、CMA(イギリスの競争市場庁、日本の公正取引委員会にあたる省庁)やICO (イギリスの個人情報保護監督機関)、各プラットフォーマーからのフィードバックなど、法律・技術の両面での厳しい評価を受けたことが要因でした。
「Privacy Sandbox」への対応には業界全体で多大な作業が必要でした。「Privacy Sandbox」に対応する市場参加者が徐々に増えていった一方で、普及にはもっと時間が必要だったとの見解や、Googleの決定はPrivacy Sandboxのテスト状況からも想定の範囲内だったという意見もありました。
広告主を含め、デジタルマーケティング業界全体のエコシステムに大きな影響が出るため、現時点での3rd Party Cookie廃止は時期尚早だったのではないかと思われます。
プライバシー保護への基本方針は変わらず
Cookie廃止撤回という方針転換があったものの、ユーザーのプライバシーを守りながら、企業のマーケティングを成功に導くエコシステムを構築するというのがゴールであるという基本方針については変わっていません。
Google社のピチャイCEOも「ユーザーに選択肢を与えることでプライバシー保護の環境を改善し、プライバシー強化技術への投資を継続するのが最善と判断した」と説明しています。
Cookieベースの技術に依存している企業に短期的な安定をもたらす一方、長期的にはCookieが廃止となる前提の状況とはそれほど変わっていないとの見方もあります。
実際に、「Safari」 や「Firefox」などの他の主要ブラウザでは、デフォルトですでに3rd Party Cookieが使用できない状況となっております。
日本のスマホの約49%はすでに3rd Party Cookieを使用できない
国内スマホのブラウザのシェアを見てみると、2024年7月現在ではAppleのiPhoneなどで使用されている「Safariブラウザ」が約49%のシェアとなっており、特に国内においてはiPhoneの利用率は他国と比べても高い状況です。
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「Safariブラウザ」では2021年からすでにCookieが使用できない状態であり、Cookie規制の影響は既に大きく出ているため、「Safariブラウザ」に対してのCookie対策は必須となっています。
これまで準備してきた代替IDを中心としたPostCookieソリューションは引き続きCookieが使用できない「Safariブラウザ」に向けては有効であると言えます。
Cookie規制はブラウザ主体から、ユーザー主体へ
これまでの議論では、Cookieの廃止は「Chromeブラウザ」で行う前提で動いていましたが、Cookie規制をブラウザで行うことによる影響は大きいため、今回のGoogleの発表では、「ユーザーが選択できる新しいアプローチを提案する」としています。
ユーザーに一任する手法は、今のところAppleデバイスに採用されている「ATT(AppTrackingTransparency)」のような手法になることが見込まれています。
ATT (AppTrackingTransparency)とは?
「ATT(AppTrackingTransparency)」とは、Appleのユーザープライバシー機能で、アプリが他のアプリやWebサイトなどを横断してユーザーの行動を追跡するかを、ユーザーの選択に委ねる機能
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現在、AppleデバイスでのATTでのトラッキングの許諾率は、
約20%程度(https://ja.youappi.com/the-state-of-att-opt-in-rates-in-2023/)とされており、Google Chromeにも同じようにユーザー自身がトラッキングについて選択できる機能が適用されると、ユーザーが許可しない限り、Cookieは実質的に使えなくなる可能性が高いこととなります。
このようなことから、今回のGoogleの発表は一見Cookie廃止を撤回する方針変更であるものの、実態としてはトラッキングを許可するユーザーが限定的になることが予測されることから、Cookie廃止に向けた4回目の延期に近いとも言えるという意見もあります。
“3rd Party Cookie”と“Post Cookieソリューション”を併用するハイブリッドな方式へ
当面、3rd Party Cookieはしばらくは存続すると思われるものの、引き続き3rd Party Cookieを使用しつつ、PostCookieソリューションを含めたハイブリッドな広告配信が主流になると考えられます。
当社にてこれまで導入を行ってきたPost Cookie施策をまとめておきます。
1.Cookieに代わるID技術の仕組みの導入
下記のとおりCookieに代わるID技術を有する各社との連携。(リリース順)
Intimate Merger社の提供する「IM-UID」
https://www.microad.co.jp/news/detail/1626/
The Trade Desk社の提供する「Unified ID2.0」 https://www.microad.co.jp/news/detail/1800/
LiveRamp社提供の「LiveRamp ID」
https://www.microad.co.jp/news/detail/1644/
2.CookieやIDを使わない広告配信の仕組み
コンテンツの中身を解析して、コンテンツ内容に合わせた広告配信。https://www.microad.co.jp/news/detail/1468/
3.スマートフォンアプリからの取得データを活用した広告配信。 https://www.microad.co.jp/news/detail/1567/
4.Googleの広告配信用の新しい仕組み
Googleが提供する広告配信や効果計測が可能となるAPI群である「Privacy Sandbox」
https://www.microad.co.jp/news/detail/1959/
まとめ
デジタルマーケティング業界における現時点での意見や見解を4点にまとめました。
Webユーザーに対するプライバシー保護への基本方針は変わらず、長期的にはCookieが廃止となる前提の状況とそれほど変わっていない
これまで準備してきた代替IDを中心としたPostCookieソリューションは引き続きCookieが使用できない「Safariブラウザ」に向けては有効である
Googleは3rd Party Cookieを廃止しない代わりに、ユーザーが選択できる新しいアプローチを提案するものの、ユーザーがトラッキングを許可する割合は限定的とみられる
当面は、PostCookieソリューションを含めたハイブリッドな広告配信が主流になると考えられる
今後も業界全体の動向に注視しつつ、当社としての方針や情報の整理を随時共有させていただきたいと考えております。
引き続き弊社へのご支援のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
■免責事項
本記事は、当社事業や業績などIRに関する情報提供を目的として作成しており、投資勧誘を目的にしたものではありません。
実際に投資を行う際は、本記事およびIRサイトの情報に全面的に依拠して投資判断を下すことはお控えいただき、投資に関するご決定は皆様ご自身のご判断で行うようお願いいたします。