【超空想携帯獣学】アローラダグトリオのひげセンサー
アローラ地方に生息する、ダグトリオのリージョンフォーム。頭?から生える「ひげ」が特徴的。このひげは、頭を守れるほどの硬さがある金属製で、さらに高度なセンサーとしても機能するそうです。謎多きひげ、一体どんな仕組みなのか、工学の視点から考察してみました。
※注意事項
この記事では、ポケモンの未知の生態を、少ない情報から大雑把に考察しています。そのため、根拠が曖昧な情報なども敢えてうのみにしながら進んでいきます。こういう考え方もあるという紹介だと思っていただき、具体的な数値などは、参考程度で読んでいただけると幸いです。
画像2枚で結果概要
どんなセンサー?
アローラダグトリオの図鑑説明文
アローラダグトリオのセンサーは、「数キロ先の音も振動として感知できる」ことから、振動センサの一種と考えられます。
音は、物体や空気などを揺らしながら、離れたところに伝わります。揺れが私たちの耳に到達し、鼓膜を振動させると、それが「音」として聞こえます。音あるところに振動あり、ということです。
振動センサは、伝わってきた振動で錘(おもり)が揺れることで、振動を感知します。この錘を、振動子といいます。アローラダグトリオの場合、ひげそのものが揺れることで、振動をキャッチしていると考えられます。
ひげのセンサーといえば…?
高度なセンサーとして機能する「ひげ」と聞いた時、ある生き物を思い浮かべた方がいらっしゃるのではないでしょうか?私たちの身近な存在、ネコのひげも非常に高度なセンサーです。ネコのひげは、非常に軽いことがポイントで、わずかな振動でもキャッチすることができます。
では、ネコのひげセンサーは、どれくらいすごいのでしょうか?音の振動を感知するアローラダグトリオのひげと比較するために、ここからは「音圧」を指標にして考えてみます。
一説によると、ネコのひげは5Å(オングストローム)の変位を感知できるそうです。1Åは原子の大きさくらいのスケールですから、とっても微小な変位です。一体、どれくらい小さな音圧が加わると、5Åの変位が生じるのでしょうか?
ネコのひげセンサーの性能
…というわけで、計算してみましょう。ネコのひげは、長さLが平均60mm、直径Dが0.1mmくらいです。材質はケラチンだとすると、硬さや軟らかさの指標であるヤング率Eはおよそ2GPaです。
ネコのひげは、下図のような片持ち梁(はり)で考えることができそうです。片持ち梁の先端に力が加わった時の先端の変位量yは、次の式で算出できます。
このひげが、ある音圧を感知したとします。先端の0.1mm2の面で音圧を受けたとして、その力をF、生じた変位が5Åだとすると、先ほどの式から音圧は7µPaとなります。これがどれくらいの負荷かというと、指先に蜂蜜を小さじ1×10-8乗を載せたくらいの大きさです。全く想像ができませんね。
ヒトの耳が感知できる最小の音圧は20µPaだと言われています。少なくとも、ネコのひげはヒトの耳で聞き取れない音を感知できるくらい高度、ということを概算で示すことができました。
ダグトリオのひげセンサーの特徴
アローラダグトリオのひげも高度なセンサーと言われていますが、ネコのひげと大きく異なり、金属質です。ネコのひげは、やわらかいことで微小な音圧にも反応できました。金属製になると、反応が鈍くなってしまいそうです。
ここで、先ほどの式にもう一度登場してもらいます。構造の硬さは、ヤング率Eがひとつの指標になります。Eは分母にあるので、金属質のひげの場合、変位yは小さくなります。
では、どうすれば変位が大きくなるでしょうか?同じ力Fを加えたとすると、残るはLとIです。Iは断面形状の強さの指標で、同じ形状なら太いほど大きな値になります。
これらをまとめると、長いほど、あるいは細いほど変位が大きくなります。そう、アローラダグトリオのひげセンサーは、ひげの長さと太さがポイントなのです。
ひげの太さを推定する!
ひげの長さは「たかさ」からある程度わかるので、ひげの太さを推定してみましょう。ネコのひげと同等の高度さを持っていると仮定して、7µPaの音圧で5Å以上変形することを目標にします。
結果①
まずは、ネコのひげと同じ太さ、直径0.1mmで計算した結果がこちらです。
グラフより、ヤング率が80GPa以上の金属でできていれば、ネコ以上の感度になることがわかりました。金色の金属である金(78GPa)と黄銅(100GPa)を参考にしてみると、三つ子の個体によってセンサーの感度が10倍から100倍も異なります。これは、長さが3乗で効いてくることを端的に示している結果です。
結果②
このままだと①が生きづらくなってしまうので、ひげの太さを個体ごとに変えてみることにしました。その結果の一例がこちらです。
かなり無理やりですが、三つ子のひげのセンサー感度が同じくらいになるように調整してみました。ひげが長い個体ほど、ひげの太さが太いという結果になりました。これくらいの太さの差があれば、ひげのヤング率もほぼ同等になりそうです。
「金属成分がわずかに違う」という図鑑説明文とも矛盾しない値が得られたような気がします。あまりに仮定が多いので、非常に大雑把な計算ではありますが…。
まとめ
この記事では、アローラダグトリオのひげのセンサーを、ネコのひげをヒントに考察してみました。当初は、「金属成分」の違いに着目していくつもりでしたが、ひげの長さの影響があまりにも大きかったので、ひげの寸法にフォーカスすることで着地させました。
この考え方はあくまで一例ですし、もちろん正解などはありません。私はこう思う!といった案をお持ちの方は、是非独自の視点で考察してみてはいかがでしょうか?
補足など
2024/06/16
今回は、夏の新刊に向けて準備中の荒削りの考察を記事にしました。ネコのひげの感度など、根拠が曖昧な情報などを敢えてうのみにしながら、仮定を置いています。こういう考え方もあるという紹介だと思っていただき、具体的な数値などは、参考程度で読んでいただけると幸いです。