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ボブ・ディランのMr.Tambourine Manをバーズのように歌う
英語のポップスを聴いて育ち、カラオケに行くといつもクラシックなロックやポップスを歌います。その中でも歌うと気持ちがすっきりする曲があります。メロディーが良かったり、英語の歌詞が深かったり、その曲が歌われた時代の社会情勢とかを感じられたりとか。
今回はボブ・ディラン作のミスタータンブリンマンを取り上げます。
ボブ・ディランはノーベル文学賞を受賞したことで有名ですが、言わずと知れた米国60年代のフォークソングの旗手的存在です。それまでの伝統的なフォークソングの殻を打ち破り、当時の社会に対するプロテストや若者の苦悩や迷い、精神的な救済などを自作のシンプルで親しみやすいメロディーにのせ歌いました。
彼の曲は当時の多くのロック、フォーク、ポップスのアチーストにカバーされ、広く、長く知られることになりました。その歌詞は抽象的なレトリックや難解な表現に富むものが多いのですが、全体を聴くと、なるほどこんなことを言っているのかと納得させられるものが多いのです。ノーベル文学賞に輝くだけあって、文学的な響きを持っています。
ディランの歌い方はかなり個性的で、だみ声でマイクに叩きつけるような歌い方、独特の節回しのものです。魂の底から絞り出すような歌は味があるのですが聴く人によってちょっと好き嫌いがありそうです。ポップスとしてヒットした他のアーチストのカバーバージョンの方に聴きやすく親しみやすいものが多いのです。ミスタータンブリンマンも1965年にこの曲をヒットさせたフォークロックグループの草分けザ・バーズ(The Byrds)のバージョンが聴きやすく歌いやすいと思います。
ということで今回はオリジナルの歌詞を短縮したザ・バーズの歌詞で歌の内容を紹介したいと思います。こんな詞です。
Hey, Mr. Tambourine Man, play a song for me.
I'm not sleepy and there ain't no place I'm goin' to.
(ねえ タンバリンマンさん、何か一曲やってよ。僕は眠くもないし、行く場所もないんだ)
Hey, Mr. Tambourine Man, play a song for me In the jingle jangle morning, I'll come followin' you.
(ねえ タンバリンマンさん、何か一曲やってよ。ジャンジャンとなる朝に、あなたについて行くよ)
Take me for a trip upon your magic swirlin' ship. All my senses have been stripped.And my hands can't feel to grip. And my toes too numb to step. Wait only for my boot heels to be wanderin'.
(あなたの魔法の渦巻く船に乗せて僕を旅に連れて行ってよ。僕の感覚はすべて奪われ、手は握る感覚がなく、足の指はしびれすぎて踏み出すことができないんだ。僕のブーツのかかとが歩きだすのを待っててよ)
I'm ready to go anywhere,I'm ready for to fade unto my own parade.
Cast your dancing spell my way.I promise to go under it.
(僕はどこへでも行くし、自分自身のパレードに消えるつもりだよ。あなたのダンスの呪文を僕にかけてよ。僕はその通りに行くからさ)
ちょっと抽象的な言葉が並んでいますが、主人公は先導者であるタンブリンマンに自分で責任を持つから、ここから僕をどこかに連れて行ってよと頼んでいるようです。
さてこの歌をザ・バーズのバージョンでカラオケで歌ってみましょう。キーが高いので、ほぼバリトンの音域の私は3つ下げて歌います。これ以上下げるとカラオケの伴奏が低くなりすぎてかっこ悪い。
バーズのこの曲は歌い出しのHey, Mr. Tambourine Man,からI'll come followin' you.まで主旋律に複数の声がぴったりとつくコーラスでで、歌は声を震わせたり、節を付けたりしないで均等にまっすぐに声を出して歌っています。カラオケは一人で歌いますが、あたかも何人かのコーラスの中で自分のパートを歌うように声を出すととバーズの雰囲気が出ます。
そして2番のTake me for a trip upon your magic swirlin' ship.からI promise to go under it.まではバーズの中心メンバーであったロジャーマッギンがソロで歌っています。彼はここを多少節をつけていますが基本はあたかもコーラスの一つのパートをそのまま抜き出したような初めから終わりまで均等に声を出すような歌い方です。なのでそのように歌えば良いのですが問題はカラオケで歌う場合はバーズのようにコーラスではなく一人で歌うので、2番も同じように歌うとちょっと単調になります。そこで2番はオリジナルのディランのように荒々しく歌ってみると変化がついて面白いです。(尚、何人かで本格的にザ・バーズのようなコーラスに挑戦してみると素晴らしいかもしれません・・・難度は相当高そうですが。)
ザ・バーズによるこのミスタータンブリンマンのヒットでボブ・ディランの名前は世界的に広く認知されるようになりました。またザ・バースもこのデビュー曲のヒットにより、フォークロックバンドの代表的な存在となります。からっとしたギターサウンドと美しい多重コーラス、深みのある楽曲を特徴とするロックサウンドはイーグルスなどのその後のアメリカ西海岸のロックのアーチスト達へと引き継がれることになりました。その意味でもロック、ポップス史上 記念すべき1曲と言えるでしょう。
歌の主人公が憧れた先導者ミスタータンブリンマンはディラン自身なのか、はたまたディランも誰か先導者に導かれたかったのか定かではありませんが、多くの人々が彼をフォークやロックの先導者とみていたことは間違いないと思います。