演歌のようにしみじみしたイーグルスの「ならず者」をさわやかに歌う
英語のポップスを聴いて育ち、カラオケに行くといつもクラシックなロックやポップスを歌います。その中でも歌うと気持ちが良くなる曲があります。メロディーが良かったり、歌詞が深かったり、その曲が歌われた時代の社会情勢などを感じられたりとか。
1970年代、アメリカLAから登場し世界を席巻したイーグルス。デビュー当初はロックとアメリカのルーツミュージックのカントリーを融合したカントリーロックを演奏するバンドとして米英を中心に若者の人気を得、やがて「ホテルカリフォルニア」のアルバムを契機に高度なアレンジと優れた演奏力で幅広い層に受けるロックバンドとして世界的に人気を得るまでになりました。
ならず者(Desperado)は、まだ超大物となる前のイーグルスが1973年に発表した同名のセカンド・アルバムに収録されましたが、当時はさほど注目を集めず、アルバムの中の隠れたる名曲的な位置づけでした。しかしイーグルスのメンバーがレコーディングでバックの演奏をしたリンダ・ロンシュタッドをはじめ多くのアーチストがカバーしたことで徐々に知られるようになりました。
この曲の入った「ならず者」のアルバムは19世紀アメリカの西部開拓時代に実在したギャング団にインスパイア―されたもので、この曲「ならず者」はそのならず者に語り掛けるような感じで歌われます。曲のタイトルであるDesperadoはスペイン語ですが、この言葉を入れることで、西部劇の舞台をイメージさせる雰囲になっています。
歌いだしは冒頭にならず者(Desperado)にwhy don't you come to your senses(目をさましなよ)と語り掛け、you're a hard one, but I know that you got your reasons(頑固な奴だな、でもお前なりの理屈はあるんだと思うけどね)と相手に寄り添うような言葉が続きます。そして語り掛けている主人公が言いたいのがThese things that are pleasin' you can hurt you somehow
(お前が嬉しがってやっていることが、いずれ自分を傷つけることになるんじゃないか)この最初の数行で言いたいことをすべて言っていると感じられます。
この歌の共同の作詞・作曲者でメインボーカルを執るドンヘンリーは具体的にある友人を思い描いてこの詞を作ったそうです。なんだかんだ昔気質で世話焼きの主人公がとびきりやさしく語り掛けています。
この後も、トランプゲームに例え、選ぶべきはダイヤのクイーンではなくハートのクイーンだとか、若いころのようにはなれないよとか、苦しいときは家にかえりたいだろうとか、自由が良いと言われても一人なら監獄だよとか、冬は寒いぞなどたたみかけるように説得が続きます。
そして歌の最後のコーラスで
It may be rainin', but there's a rainbow above you(雨が降る事もあるけれど、お前の頭上には虹が掛かるんだ)
You better let somebody love you (Let somebody love you(誰かにでも愛されるようにしてみな)
You better let somebody love you before it's too late(愛されるようになってみな。手遅れになる前にね)
ここが一番言いたいところなのかと思います。
内容は人を諭す演歌的なところがあります。しかしカラオケで歌う時は、べたべたにならないようサラっとさわやかに声を出す歌い方がお勧めです。内容がやさしく人を説得するものなので、キーが高い場合は少しオリジナルより少し下げてもOKです。
何声も重ねたコーラスが持ち味のイーグルですがこの歌ではlet somebody love you (Let somebody love you)の繰り返しのみが声を重ねたコーラスになります。複数の人数で歌う時はこの後の方の(Let somebody love you)をバックコーラスとして入れるとかっこよいです。
そして最後の最後に出てくるbefore it's too lateのtooの部分はまさに演歌のこぶしのように高低のあるふしをつけてみましょう。(しかし、あまり極端にやると冗談っぽくなるのでほどほどにです)
ビリージョエルの「マイライフ」なども、生き方についての友人からのおせっかいなアドバイスについての歌ですが、同じく70年代のこのイーグルスの「ならず者」でも主人公は友人におっせいなほどのアドバイスをします。現在は米国社会でも親しい友人関係ができにくくなりつつあると聞きます。この曲がリリースされた時代はまだ熱い友情というものが存在して人々の共感を呼んだのでしょう。