男と女のラヴゲーム
昨夜、行きつけのBARへ行って、マスターと喋りながらハーパーソーダを4杯飲み終わったところで帰ることにした。
時間は23時を回った頃。
地下鉄の駅へと降りて行く階段の踊り場で、中年の男性と20代と思しき女性が向かいあって、何かを話している。
「そんなふうに言ってもらえて、僕も嬉しかった」
と中年男が言うと、若い女性は
「はい、、、はい、、、」
と答えた。
お酒を飲むと視覚が怪しくなる代わりだろうか、聴覚が異常に鋭くなる。
駅へと急ぐ雑踏にかき消されるどころか、エスパーのように彼らの会話だけがクローズアップされて僕の耳に届く。
彼らの前を通り過ぎた時間は2秒ほどだったので、前出の会話のみしか聞こえなかったし、会話を盗み聴くためにそこにとどまるのも変なので、ナチュラルにやり過ごしたが、あれは会社の上司と部下に違いない。
中年男は部下を口説こうとしていたに違いない。
多分そう思う。
そんな雰囲気だった。
・・・違うかな。
駅のホームへ降りると、運よくちょうど地下鉄がきた。
車内へ乗り込むと、若い男が彼女らしき女性に壁ドンならぬ、ドアドンをしながら話をしている。
今度は車内なので会話は聞こえたが、薄い会話の中身に興味がなくなったのと、隣の中年男性四人組の会話がうるさかったこと、そして酔っていたので、カップルの会話内容は忘却の彼方へと飛んで行ってしまった。
自宅最寄り駅に着き、改札を出て階段を上がっていくと、前方を女性が早足で歩いている。
この早足の女性が苦手だ。なぜなら、進行方向が同じだとなかなか抜けず、まるで僕が痴漢であとをつけてると思われてるんじゃないか、と心配になるからだ。
そして、こんな時に限って、ほぼ自宅まで同じ道順なのだ。
抜こうとすると女性も足を早めるし、遅めると後ろから新たなる帰宅者が現れる。
最終的に前を歩く女性は、赤にかわりかけの信号の交差点を駆け足で渡ってくれたので、その後はいらぬ心配をせずに帰宅できた。
酔って帰ると、いつもこんなことを考えている。
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