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スマホ決済をすると、商品やサービスの品質が悪くなる理由
基本的に現金決済で生活をしてきた私ですが、スマホ決済を始めることで、マイナポイントが最大5,000円付与されるという“誘惑”に負け、ついに「au PAY」デビューを果たしたのです。
ただし、現在はすでに、現金決済に戻しました。
「便利なものは、必ず品質が低下する」
主な理由はこれなんですが、本日はそんなお話を。
クレジットカード手数料に驚いた話
20代後半のことです。
新宿の街を買い物がてら、ぶらぶらしていたのですが、店先の皮ジャンが目に留まり、お店に立ち寄ったことがありました。
そのお店は個人店で、50代か60代のご夫婦らしき二人が経営する、輸入アパレルショップでした。所狭しと皮製品が並んでいたのですが、ふと、いかにも柔らかくて着心地が良さそうな、黒の皮ジャンを手に取ってみたのです。すごく気に入って試着したら、サイズもぴったり。店員さんにもすすめられ、その気になった私。
「これ、いくらですか?」
「49,800です。ただ、カードでなく現金なら、5%引きだよ」
そんなやりとりがあり、当時はクレジットカードを持っていなかったので、現金で支払い、皮ジャンを5%引きで購入したのでした。
つまり、クレジットカード会社に、5%くらいの手数料を支払っている、ということなのでしょうか。その手数料の大きさに、とても驚いたものです。
約5万円の商品ですから、手数料5%だと約2500円か。5万円は売価であり仕入原価ではないため、決済方法は、このお店の利益に大きく影響を及ぼしていることがわかります。
つまり、小売店にとって、数%の決済手数料はバカにできません。
また、3年くらい前の出来事です。
近所にある居酒屋さんでも、店員さんと同じやり取りがありました。
「カード払いなら、サービス料がかかる。
現金ならかからないから、お金を下ろして来たほうがいいよ」
もともと、飲食の代金をクレジットカードで支払う習慣はないため、何も言わずに現金で支払ったのですが、ここでも、個人店における決済手数料の大きさに、改めて気づかされたというわけです。
そして現在、スマホ決済の大流行が到来
私の会社でも、ほとんどの従業員はコンビニや飲食店などの日常的な支払いに、スマホ決済を利用しているようです。auPAYとPayPayとか、2~3のサービスを使いこなす“強者”もいると聞いています。
たしか現在は、スマホ決済サービスの導入店舗を増やすため、お店から決済会社に支払う手数料は、無料もしくは少額になっているのではないでしょうか。しかし、いずれは数%の手数料がかかるようになるはずです(そうでないと、決済サービス会社は儲けが出ないため)。
クレジットカード手数料と同じく、たぶん、大手チェーン店と個人店では、その負担率が異なるでしょう。それが1%なのか3%なのか5%なのかは知りませんが、ともかく、手数料負担がお店にのしかかってくる以上、どこかでこれを吸収しなければなりません。極論すれば、お店の利益を減らすか、原価を下げる(あるいはサービス品質を下げる)か。
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やはり、コロナ感染前に消費が戻るのは時間がかかりそうですし、利益を減らしたくないのは商売人として当然です。すると、売価を変えないとすれば、決済手数料の分を吸収するのは、原価のほうになってくるのでしょう。この例では、50円の原価を47円に抑えなければならず、商品の品質低下は確実です。
つまり、消費者にとって便利なスマホ決済が拡大することにより、現金払いの人をふくむ消費者全体が、品質の良くない商品やサービスを享受しなければならなくなる、ということです。
私が現金払いにこだわるのは、こんな理由からです。
デリバリーの手数料を、店舗が負担するということは……
コロナ禍が後押しして、生活に定着しつつある、ウーバーイーツや出前館などのデリバリー・サービス。雨で外出したくないときなど、自宅で商品を受け取れるのは、とっても便利ですよね(私は一度も利用したことがないけど)。
でも、決済手数料と同じように考えると、デリバリーの会社に支払う人がいなければ、このサービスは成り立ちません。
こちらも、消費者から多少の手数料は取るかも知れませんが、一定の割合をお店が負担することになります。その分、原価を下げることによる品質の低下は、十分にあり得ることだと思います。利益を減らすのは、商売人にとって、一番考えたくないことですから。
価格に手数料を上乗せできる、超一流店ならまだしも、日々の生活に便利なスマホ決済の拡大は、ますます小売店を苦しめることになりそうです。
便利をとるか、品質をとるか。
便利が当たり前になった現代において、まさに、究極の選択ですな。