続くトラブルと頼りがいのある男/48歳バツイチだけど運命の人に出会った【21】
BARを開いた「私」は出会った次の日から「たー君」と付き合い始めました。たー君は会社の従業員が乗っ取りを企み、ストレスで毎日私に当たります。会社は従業員の半分が辞めて大打撃。そして今度は私にも……。
「サイコパス」な従業員・曽我が、たー君の会社から金と人と客を盗んで会社を起ち上げたことは昨日書きました。
たー君はストレスで私に当たり、何を言ってもやっても気に入らず、毎日怒鳴り散らしています。
しかも毎日4リットルペットボトルの焼酎(大●郎とかああいうヤツ)を何杯も飲み、肉やら揚げ物やら高カロリーのつまみを食べるせいか痛風になりました。
足が痛いのにビールは止めないし、痛くてまた私に当たるしで最悪ですよ。
しかもたー君、アトピーもあるんですよね。
夜になると背中が真っ赤になり、ひどい時は顔も赤くなって痒がります。
さらには夜中に咳が止まらないこともあり、そのたびに私はやきもきする日々でした。
たー君は私と出会う数年前に「息ができない」というナゾの症状で入院までしているのです。
何が原因かもわからず、一時は遺書まで書いたそうな。それはなぜか治ったそうですが、肺もあまり良くないのかよく咳込みます。
だから夜中にゴホゴホ言うと、こっちまで心臓が痛くなる気がしてました。
さらには。
なんと私にまでトラブルが起こりました。 車関係で。
最初は信号不停止で罰金。 次は店の前に車を止めて駐車禁止。
昼間に店の掃除に行くのですが、いつもは換気もあって扉を開けておくのです。
その日は雨交じりの風が吹いていたので閉めていたら、まさかの15分程度で駐禁を取られました。
えっ。隣の店は毎日一時間も停めてるのに?
曽我とかお金盗むママは逮捕どころか調べもしないくせに、真面目に生きてる人間から金取るって警察××××!
三か月余りの間に二度も違反を取られ、さらには買ったばかりの車をぶつけてしまいました。。。
私はずっと東京に住んでいたため、実家に戻って40歳で免許を取ったのです。 ですからもちろん安全運転で過ごしてきたのですが、やっと慣れて運転を過信しはじめた時期だったのでしょう。
事故を起こしたときは、たー君宅から実家に帰るところでした。
交差点で前の車が左折したのですが、その後つづけて直進したら、左からきた車にぶつけられたのです。
自分のほうが優先だと思っていたので、まさか左から車が来るとは思ってなかったんですよね。。。
頭の中、真っ白。
事故の瞬間ってスローモーションになるってホントですね。
車が来る、ってわかっているのに、どうしようもない。
ぶつかるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううう………どぉーーーーーーん!!!
……みたいなカンジ。
とりあえず車を降りたら、向こうも出てきて、これがまたいかにもヤンチャしてましたみたいな30代くらいの兄さんなんですよ。
しかも車の中からは、奥さんとまだ小学生みたいな子供がゾロゾロ四人も出てきました。
「こっちが優先だぞ! わかってんのかコラァ!!」
えっ?
こっちが優先じゃないの?
見ると、私が走っていた道路に、一時停止の標識が。
道路幅はこちらのほうが広いぐらいなのに何故?
気づくとと手のひらが真っ赤でした。 ぶつかった衝撃で、手の爪から血が出ていたのです。
向こうのゴツイ車はフロント部分少しへこんでいた程度で、そのまま乗れるくらいなのに対し、私の軽自動車はフロントがボッコリ凹んでいました。
向こうの兄さん、いえお父さんがコワイことを言いました。
「子供が首が痛いって言ってる」
ええっ!! ケガ?
こ、こういう時どうすればいいの?
事故を起こしたことも初めてなら、こういうことに対処するのももちろん初めてなわけです。
パニックを起こした私はたー君に電話しました。
お昼すぎくらいですが、いつもなら起きてない時間です。
何回かコールしてやっとたー君が出ると、やはり不機嫌な様子でしたが、
事故を起こしたこと、向こうの様子と子供が首が痛いと言ってることを言いました。すると。
「わかった。すぐ行く」
と、キリッとした声。
それで心から安心したのです。
たー君がうまくやってくれる、って。
たー君が来る前に警察が来て事故の状況を聞かれました。
最初は若い男性警官が穏やかな様子で聞いてきたのに、次になぜか少し先輩の男性に同じことを説明しなくてはならず、しかもその先輩はやたら高圧的。
「アンタが前をよくみてなかったんでしょ? 10対ゼロがアンタが悪いんだよ? 認めなさいよ!!」
こんな調子。 たしかに事故は起こしましたが「アンタ」呼ばわりするって何なの? 第一、こちらのほうが明らかに年上なのにその高圧的な態度ってどうなの?
相手方に責められ、警察から責められ、私はその場から逃げたい気持ちでいっぱいでした。
すると。
見慣れたたー君の車が到着。
出てきたのは アロハシャツにハーフパンツ、しかもサングラスをした非常にガラの悪いおっさんでした。。。
下手するとヤ○ザにしか見えないたー君、私がさっきの警官にガーガー責められているのを見ると、
「おう、どうした? かあちゃんとケンカでもしたのか?」
と、警官をからかいはじめました。
たー君、なんてことを!
すると、その警官のトーンが落ち、さっきより丁寧な対応になりました。高圧警官が何か言うたびに、たー君がツッコミを入れるのでやりにくそうです。
相手方の事情聴取に移ったので、私はたー君に事故の説明をしました。
「10対ゼロで私が悪い」と言われた話をすると、
「そんなことはない。俺に言わせれば6対4ぐらいだ。いくら優先でも向こうも前方不注意だ」
…… と、すごく心強い言葉を言ってくれます。
運転代行社をやってるたー君ですから事故には慣れています。そのたー君の言葉にとても安心しました。
たー君カッコイイ♥♥♥
曽我の件で警察が動いてくれなかったことに腹をたてていたたー君は、車を調べていたさっきの警官をからかって憂さ晴らしをしているようです。
すると、一人でいた私のところに相手方のお父さんが来て「あの人……だんなさん?」 ……と聞いてきました。
私は力いっぱい「そうです」と応えました。すると、こちらの態度もなんとなく変わりました。
しかし、心配なのは「首が痛い」と言っていたという向こうのお子さんの様子。
救急車が来て、お母さんと子ども二人はそれに乗っていったのですが、外から見た様子では普通に走ったりしていたし、どの子がケガしたのかわからなかったのですが。
相手方のお父さんに「お子さんの様子は大丈夫ですか?」と聞いてみるも、答えてくれず。
見ると向こうの車はすでにレッカー移動していました。
そんな時、警察官が私を呼びに来てました。
私が呼ばれている間、たー君と向こうのお父さんが何か話しているのが見えました。
後から聞くとたー君は相手方のお父さんに
「あんまり事を大きくしないほうがいいんじゃないか?」
……と言ってくれてたというのです。
車の分は保険で賄える。 しかし後遺症となると後々面倒なことになるから、と。
結局、私の車は全損扱いでしたが、向こうのお子さんの後遺症もなく。
なんとか無事に終わったのですが、ああいう場面ってやっぱり「男の世界」なんですよね。
たー君のように「慣れてる」人がいるのといないのとでは、まったくちがう。 たー君がとても頼もしく見えた一日でした。
でもあの車、買ってまだ一か月経ってなかったんだよな。中古車だけどさ。。
つづく