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ちょいちょい書くかもしれない日記(額装)
買った絵が額に収められていると、ホッとする。
画家自身がその作品に合う額を選んだのだから、絵もさぞ居心地がいいだろうと思う。
でもときにむき出しの絵を入手することもあり、そうすると素人は悩むのである。
キャンバスの側面まで色を塗ってある小品は、なんだかこのままで飾るのがいい風情だなと思い、実際、ずっとそうしている。素朴で、さりげなくて、とてもいい。
でも、サイズの大きなものは、そうはいかない。
何しろ我が家には、思わぬ悪さをする、まだやんちゃ盛りの猫がいるのだ。
飛びつかれでもしたら、取り返しのつかないことになってしまう。
何としても、守らねば。猫からも、それから紫外線からも。
でも、適当なフレームを百均で買ってきて……は、絵にも作家さんにも申し訳ない。
そんなわけで、先日手に入れたまさにむき出しの日本画を、額縁の専門店に持っていくことになった。
検索するまで、駅前にそんなお店があるなんて知りもしなかった。
何でも経験してみるものだ。
思っていたよりうんと小さな店内は、画材や額、それになんだかよくわからないものたちで溢れかえっていた。
品物の隙間から、僅かに顔が見える店主に「こんにちはー」と挨拶する。
「はいこんにちはー」と返してくれたが、用向きは訊かれなかったので、どうにか店の奥まで行き、絵が入った箱を差し出して、これを額装してくださいとお願いした。
「イレギュラーなサイズだねえ」
店主はそう言いながらキャンバスのサイズをはかり、絵をしげしげと眺めてから、カタログを開いた。
「銀か、銀と茶色か」
示されたのは、たくさんの額縁の中から、たったふたつ。
「絵の邪魔にならない、シンプルで、でも安っぽくはないやつ。どっちでもいける」
解説が、後からついてきた。なるほど。
素人なので、プロが見立ててくれるとありがたい。二者択一なら、まあなんとかなりそう。
四秒考えて、銀のほうで、と言ったら、店主はニヤリとした。
「そうだと思った。取り寄せだから、少し日数がかかるよ。絵はこっちで預かっておくからね」
なんだか、あっという間に用事が済んでしまった。
手ぶらで店を出て、隣の青果店でとても長いなすをひと盛り買った。
旬でない野菜を、敢えて食べたいときもあるのだ。
斜めにスライスしてフライパンで焼き、塩胡椒するだけでおいしかった。
そうか、なす、去年の夏に突然実家が消滅して以来、買ってなかったな。
使う食材の幅が、狭くなってしまっている。
ひとりの食卓を、もっと楽しめるようになろう。
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