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ちょいちょい書くかもしれない日記(暮れの元気なご挨拶)

いつも、スキをありがとうございます!
たぶん、書き手になった経験がない方には想像もつかないくらい、大きな心の支えになっています。
チップも本当に恐縮です。
猫たちにお年玉おやつを買わせていただきます。(前文終わり)

朝イチで駅前の内科医院へインフルエンザワクチンの注射を受けに行った。
寝過ごして慌てていたせいで、上着を持たずに車に飛び乗ってしまった。
当然ながら、降りてからが真剣に寒い。
エステサロンと見紛うばかりのキラキラしたクリニックもまた、先日の耳鼻科同様、発熱外来という名の戦場と化していた。
すぐ近くのクリニックよりインフルエンザワクチンが500円安いという単純な理由でそこに決めたのだが、待合室が存外狭いので、待ち時間が長いと嫌だなあ……と思っていたが、予約が効いたのか、呼ばれるのはとても早かった。
「今日は激しい運動は避けてください。お酒はちょっとくらいならいいです。お風呂も大丈夫です。一応、打ったあと15分待機してください。あっでも隣のコンビニとかなら行ってもらってもいいです」
立て板に水の大らかな説明を聞きつつワクチンを打ってもらったのだが、ついぞなかったくらい痛い。
これは先生のせいではなく、注射針が偶然、痛覚の受容器があるところをブッ刺してしまったタイプの痛みだ。
「あだだだ、痛点クリーンヒットですね」
思わずそう言ったら、先生は眉ひとつ動かさず、「僕、打率が不思議なくらい高いんですよねえ」と即座に打ち返してきた。
関西に住んでいることを実感する一瞬である。
「ワクチンの効果が出るのは2週間以上かかるので、今日打ったからといって油断しては駄目ですよ」と帰り際に言われた。
さすがにわかっとるわ……と思ったが、そういえば今年から健康保険が文美になったのだった。
つまり私が医者だなんて、先生は知る由もないのである。
はーい、といい返事をして診察室を出た。

ちょうど庭仕事用のウルトラライトダウンを買おうと思っていたので、ユニクロに寄って購入してから、父の墓がある霊園へ向かうことにした。
すぐ着ます、と言ったら、ラベルをパチパチと外してくれながら、店員さんが真顔で「そうですよね寒いですよね」と言った。
「家に上着忘れてきちゃって」
と正直に打ち明けると、「マジすか」と、明らかに大丈夫かお前という顔で上着を渡してくれた。
いちばんマジすかと思ったのは私自身だよ。

平日の午前だというのに、霊園はそこそこ混んでいた。
少し考えたが、後片付けが行き届かないとかえって見苦しくなるので、花は買わなかった。
墓を水洗いして、線香を手向けて、実家の売却が完了した報告をする。
最後のほうは、脳梗塞の後遺症+リハビリ拒否で足がすっかり悪くなり、階段の多い実家を持て余していた父なので、ガッカリすると同時に、おそらく安堵してもいるのではなかろうか。
相変わらず景色がええなあ、と言いつつ、ひと休みして、駅前で買ったサンドイッチを食べ、ペットボトルのミルクティーを飲んだ。
神戸の港と海を見下ろしながら食べるサンドイッチは最高に旨い。
父の墓前には、大好物の鶴屋八幡のどら焼き、舞鶴を供えた。
無論、帰りには回収する。私の今夜のおやつとなる予定だ。
そこから少し離れた場所にある母方の祖父母の墓にもお参りした。
相変わらず、草1本引かれた形跡がない。
前回、私がささやかにむしった、そのままの姿だ。
お掃除サービスすら入れていないんだな。
祖父母には子供が5人いるが、それでもこうなってしまう。
山を切りひらいて造成された広大な墓地は、すぐ近くまで車で来られるとしても、結局そこから坂道と階段をクリアしないとお墓にたどり着けない。
この1年半、父の知人友人たちの墓参に付き合って思ったことは、「この墓地、高齢者には厳しすぎる」だった。
祖父母の子供たち、つまり母の兄弟たちは皆、墓参を避けたい体調になっているのだろう。母を見ていればお察しである。
そして、孫たちは墓参など考えもしない。日々のことで多忙すぎるのだ。
墓に行く時間があったら家でゆっくりしたい。それもまたよくわかる。
本来ならば、死者の安息の地、残されたものの心のよりどころであるべきお墓が、確実に負の遺産になりつつあるのを感じる。
弟は、父の納骨式の日に、「母が入って一回忌過ぎたら、もう墓はしまってしまおうや」と言っていた。
本当にドライな男なのである。
さすがに三回忌くらいまでは待たんか? と思ったが、父の一回忌の法要すらしなかったことを思えば、「まだ早いんちゃう?」くらいのタイミングで墓じまいに取りかかるほうがいいのかもしれない。
個人的には、その日はもっと先であるよう願っているのだが。
というか、なりゆきで墓は私が継いだことになっているので、墓じまいも実務は私がやることになる。ベリーベリー面倒臭い。
今も、墓参しているのは私だけだ。
まあしかし、新型コロナウイルスが5類になった直後の受け入れ病院激減の中、譫妄バリバリ、超攻撃的新型コロナウイルス感染高齢者であった母を、自分の職場に頭を下げまくって受け入れてもらい、主治医として4ヶ月頑張ってくれた弟の奮闘は、他に代え難い。
あの踏ん張りがなければ、確実に詰んでいた。
墓くらいしまわしてもらいますわ、という気持ちではいる。

祖父母の墓には、挨拶ののち、とても中途半端なお願いをした。
私にはどうなるのが最善なのかさっぱりわからないけれど、母にとっていちばんハッピーな晩年の過ごし方、人生の畳み方ができるよう、力を貸してください、と。
母は祖父のことをとても慕っていたので、いつかあっちの世界で、私たちのことなんか綺麗さっぱり忘れて、ただの娘に戻って祖父に再会できたらと願う。
なんとなく、それが母にとってはいちばんの幸せという気がするのだ。

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椹野道流
こんなご時世なのでお気遣いなく、気楽に楽しんでいってください。でも、もしいただけてしまった場合は、猫と私のおやつが増えます。