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ちょいちょい書くかもしれない日記(すたすた)

朝、弟からのショートメール着信で目覚めた。
施設から連絡で~、という始まりで、また母に何かあったのかとドキッとして眠気がたちまち去った。
でも、続く文言は、「突然母がスタスタ歩き出して、そのままそこそこの距離を歩いて転びかけたらしい」だった。
いやもう何て? 支えなしに歩ける日は来ないだろうとか聞いてたんですけど……?
人体の無限の可能性というやつか。
というか、転倒、ダメ、絶対。気をつけてー!
「歩行器を急ぎ導入しますって言ってたからレンタル料の支払いよろしく」
お、おう。それは任せろ。
まあ何だ、誰かが見てくれているところなら、まったく歩かないよりは歩いたほうがいいね……? たぶんそうだよね……?
「ウンコは無事出たそうです」
それはなによりです。
起き抜けから情報量が多い。
なんだかもう、疲弊を自覚した瞬間から本気でしんどくなってしまったし、なんだかとても気持ちが沈んでもいる。
午前中にネットスーパーの配達を頼んでいるので、少なくとも昼までは家にいることにした。
したのだが、続いて施設から電話。
母が歩き出したことにより、履かせていたスリッパではあまりにも心許ないので、靴底に適度にグリップのある、しかも母の変形しまくった足首にアジャストする部屋履きを用意してくれ、つま先と踵があるものが必要、とのこと。
難しいことをサラリと仰る。
ここはひとつ、あゆみさんやな。合点だ。
「あゆみ」さんというのは、介護の世界では中1英語くらい周知されているシューズブランドのことだ。
色んな靴を作っておられて、品質にも信頼度が高いらしい。
以前、製造メーカーに相談したとき、母の足首変形のタイプの歩行をサポートする靴はありません、作る予定もありません、というきっぱりした拒絶のお返事をいただいたのだが、理由が「母のケースがレアすぎる」なのでやむを得なかった。採算が取れないものを求めるわけにはいかない。
でも今、母の変形した足首と斜めになった足を受け入れられるよう、足首の太さ、足の甲の高さを調整できる靴を……となると、やはりあゆみさんで探すのが早い。
母の痛覚が鈍ったおかげで、以前のように「足首をガッチリ固定して支えてくれる」という必要事項が外れたから、探しやすいはずだ。
ついでに靴下もそろそろでは? とお訊ねしたら、まだ大丈夫だけれど、予備が二足ほどあると安心だ、とのことなので、必要なものを一網打尽にすべく、結局、買い物に出ることになった。
昨日の私の最悪なありさまに、「休め」と皆さん言ってくださるけれど、なんだかんだ休めないものだ。
でもまあ、電車に乗って大阪に行くと、底辺を這いずるようだった気持ちが、少し持ち上がった。
靴はまあ使えそうなのが見つかったし、ワコールで新しく出ていた服がなかなか素敵だったので、軽いベストタイプの上着と共に買った。
お値段は高いが(特に肌着)、ワコールのものが圧倒的に着せやすく保ちが良いので、結局コスパがいい……というのは、お世話になっている介護士さんがよく仰るところだ。
特に靴下は、私がいつも履く靴下が6足買える価格ではあるが、締め付けがなく、足首ががぼーんと広く、それなのにずれてこない優れものだ。
母のためにあるんじゃないかと思うくらい、その存在がありがたい。
自分で買い物に行けない母には、せめて着心地のいい、綺麗な服を着せてあげたいし、現場の人が着せやすいというのなら、それが何よりだろうと考えている。
ワコールの高齢者用の服は、正直見るたび「ダサ……」と思うのだが、実際に袖を通したところを見ると意外なほど映える。
そこはデザイナーの腕の良さなんだろうな。
ちょうど試着していた方が纏っていたブラウスが本当にラインが綺麗で、お似合いだった。
見知らぬ人なのに、めちゃめちゃ褒めてしまった。
「店員さんでもない方がそんなに褒めてくれはるんやったら、ほんまに似合うんやね」と笑っておられた。

食品売り場を突っ切って駅へ向かう帰り道、つい焼き鳥と、とん蝶を買った。
焼き鳥は、勿論焼きたてのほうが美味しいに決まっているけれど、冷えた焼き鳥は、一度だけ、両親と名古屋の叔父叔母と共に見に行ったお相撲を思い出させてくれる。
狭くて冷えて腰が痛くなる枡席だったが、それでもあの特別感は忘れがたい。
阪神百貨店限定のとうもろこしとん蝶がお気に入りだ。
今の季節は、レンジであっためて食べると、昆布からいい味が出てとても美味しい。もっちりしたおこわは、さすが和菓子屋さんという感じ。

帰宅したら、父がお世話になっていた公認会計士さんから、丹波の黒豆と小豆と山芋が届いていた。
父あてに、毎年いただいていたものだ。
それを使って私が炊いた黒豆とおぜんざいは、両親の大好物だった。
自分で言うのも何だが、私が炊く黒豆は滅法旨い。
土井勝先生方式で炊くが、味付けは我が家風で、しっかり甘くする。
山芋は、磯辺揚げととろろごはんと、鍋にしようかな。ゴロンと大きいので、食べごたえがありそう。
ようやく最近、自分だけのために食事を作ることにも、それなりの楽しみを見いだせるようになってきた。
親の期待に応えられるように生きてきた子供時代と、すぐに関係が破綻しがちな両親の間を繋ぎ、家族を維持するために生きてきた何十年かが終わり、やっと自分のために生きられるときが来たのかな、と感じている。
そうは言うても猫が6匹もおるんやけどね。


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椹野道流
こんなご時世なのでお気遣いなく、気楽に楽しんでいってください。でも、もしいただけてしまった場合は、猫と私のおやつが増えます。