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ちょいちょい書くかもしれない日記(高飛び)

もう専門学校の夏休みが終わってしまう。
カリキュラムがギチギチすぎて、2週間以上の休みがあげられないのだそうだ。
社会人になったら長い休みなんてなかなかとれないんだから、学生の間くらいもっとゆったり……と、非常勤講師の私などは無責任に思ってしまうが、なかなかそうもいかないのだろう。
お盆明けを待たずに日常が戻ってくるので、その前に、1日だけ私自身のための夏休みを貰うことにした。
打ち合わせの予定もあるので、休みかというと何だかそうでもない気がするが、気は心というやつだ。
大好きな画家さん、伊藤ゲンさんの個展にお邪魔すべく、新幹線に飛び乗った。
我が家には伊藤さんの作品がすでに3点あるのだが、なんというか、物凄くうちに馴染んでいる気がする。
私は、好きでお迎えした絵はすべて飾る。しまい込むことは決してしない。
ただ、「あの部屋にはこの絵がぴったりだ」みたいなオーガナイズされたお迎えをするわけではないので、届いた絵を抱えて、よき居場所を求めて家じゅうをさまようのが常だ。
でも、伊藤さんの絵は、「これをください」と唐突に言った瞬間から、踊り場に置くと決めていた。
ネットで見たとき、野武士が彫った仏像のような絵だ、と思っていたら、実際にお目にかかったご本人が野武士のような方だった。
何もかもがしっくりきたので、何一つ迷うことなく、作品は踊り場に落ち着いた。
毎日、階段の上り下りのたびに目に入るので、とても嬉しい。
今回の個展も、素晴らしかった。
淡々としていて、でも落ち着いているというのとも何か違っていて。
画家の記憶そのものは私には伝わってこないけれど、遠い昔、ほぼ同じものを見ていた私の記憶が呼び覚まされる。
苦くて、甘くて、日向とほこりと畳のにおいがする記憶たちだ。
これと決めた絵があったのだけれど、実際に目の当たりにすると他の絵に強く心惹かれて、それをお迎えすることにした。
額装は地元の額縁屋さんにお願いすることになるが、特に私の希望などは訊いてくれないので、たぶんまた彼のセンスで素敵なものを選んでくれることだろう。
普段、あまり聞く機会がないので、額縁屋さんの講釈を伺うのも楽しいのだ。

伊藤さんは、凄くまっすぐにご自分の作品を「よく描けた」「これは傑作です」と仰る。
とてもいいな、そうであらねばといつも思う。
私もそう言えるようなものを書かねばと思うのだが、性格上難しそうだ。
私はたぶんこの先も、「どうでしょうかね……」と首を傾げながら差し出すのだろうな。


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椹野道流
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