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ちょいちょい書くかもしれない日記(国税局)

実家に毎朝毎夕、風を通し、戸締まりをしに通っている。
数日前から、固定電話に留守電が入っていると表示が出ていたのだが、既に両親の知人からの連絡はほぼ絶えており、たいていは不愉快なセールス系、あるいはいたずら電話が録音されているばかりだ。
そうまでして80歳女子のパンツの色が知りたかったのか君は……と虚しい気持ちで消去ボタンを押したりするのが嫌で、ずっと無視していた。
しかしまあ、まれに入る大事な用件をミスってはいけない。
今朝、しぶしぶメッセージを再生してみたら、いきなりの「国税局のどこそこ」という部署からの伝言だった。
ヒュンッ。
何一つ、悪いことも後ろ暗いこともしていないのに緊張が走るのは、たぶん伊丹十三さんの映画のせいだ。
何かやらかしたら突然カチコミをかけてくる怖い組織という、まったく間違いではないのだろうが、極端に物騒なイメージだけが心の中に確立されている。
まあ、実家にかかってきただけあって、用事があるのは私ではなく父らしい。
あれっ、もしかして私、父の診療所の仕舞いで、何かヘマをやりましたかね?
ビビリが加速する。
いやでも、税金関係は公認会計士さんにお任せしたので、ミスはないはず。
ないはずだけど、なんか怖い~! 理屈じゃないのよ。
国税局という言葉の、響きと圧の強さが悪い。
必要な番号をそのへんにあった唯一の紙、ティッシュペーパーに控えて家に戻った。
実家は電波の入りがすこぶる悪いし、まずは相手が指定した電話番号をチェックする必要がある。
慌てて動いて、詐欺に引っかかったら目も当てられない。
PCで検索してみると、確かに国税局のとある部署の番号である模様。
よし。
少し落ち着きを取り戻して電話をかけてみたら、柔らかな声の女性が応対してくれた。
高圧的な男性が出てくるに違いないと、勝手に想像していてごめんなさい。こういうのを先入観とか偏見とか言うのよね。反省せねば。
父の代わりに電話したことを告げ、父の登録番号を告げ、自分の名と父との関係性を告げ、父が昨年の夏に死去したことを伝えた。
このあたりは、既にひゃっぺん色んなところで繰り返しているので、立て板に水である。サラサラ過ぎて、むしろ怪しいくらいだ。
どうやら、何か問い合わせたいことがあって父の診療所に郵便を送ったところ、返送されたので、まずは現状確認をと電話をくれたらしい。
1年の郵便物転送期限が切れたことの弊害が、バッチリ起こっていた。ああ。
幸か不幸か、用件は、父が死んだらもう意味をなさないたぐいのことであったらしい。
こちらで処理しておくので大丈夫ですと言われ、ホッとして、お礼を言って受話器を置いた。

今日も学校。
教室の中は、たいていむわっと蒸し暑い。
長袖を着ようとしてふと思い直し、半袖のTシャツに着替えた。
学校のすぐ近くにホームセンターがあるので、帰りに高頻度で立ち寄る。
ホームセンターはヤバい。
100円ショップやLOFTと同じヤバさがある。
特に用がない売場まで、ついうろついてしまう。
これはもう父方の祖父から父を経由してもたらされた「新商品大好きDNA配列」のせいだ。間違いない。
生活用品や猫たちのフードやおやつ、おもちゃを買って、その日に学校で働いた分をおおむね使って帰ることになる。
自転車操業にも程がある。
ただ、苗については、そのホムセンでは買わなくなった。
数年前まではとても管理がよかったのだが、たぶん担当者が替わったのだろう。入荷したばかりのもの以外は、かなり可哀想な感じで傷んでいる。
やはり、店は、そこで働く人たちが作り上げるものだ……と実感する。

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椹野道流
こんなご時世なのでお気遣いなく、気楽に楽しんでいってください。でも、もしいただけてしまった場合は、猫と私のおやつが増えます。