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ちょいちょい書くかもしれない日記(淀川花火大会)

嫌いな人はあまりいないと思うが、御多分に洩れず、昨年死んだ父も花火が大好きだった。
大阪の淀川に近い下町で生まれ育ったので、淀川花火大会は、中でもとびきり思い入れが強い花火だったらしい。
20年以上前、父が帝国ホテルの企画を気に入って、大阪の帝国ホテルで1泊して、ホテルがチャーターした船から、ほかのたくさんの参加者と一緒に花火を見たことがある。
淀川の花火大会は、川のど真ん中に置かれた台船から花火を打ち上げるので、船上から見るのは最高の贅沢なのだ。
今のように、花火を歌に合わせて……というのがそう一般的ではなかったので、純粋に花火と、打ち上げの音を楽しむことができた。
といっても、火薬のにおいと、煙と、淀川の水のにおいと、船の燃料のにおいと、船の場所取りで揉めるおっさんたちの荒々しい声もそこにはあったわけだが。
両親と何か話した記憶はあまりないのだけれど、船はお世辞にも綺麗とは言えなかったし、川面からけっこう大きな魚が船にガンガン飛び込んできて、母が「あんまり優雅じゃないわね」とこぼしていたのは覚えている。
でも、花火大会も遊園地もテーマパークも、何が嫌って帰りの人混みが死ぬほど嫌なので、船とホテルの行き来が貸切バスだったことが、いちばん優雅だったなあ……と今になって思う。
帝国ホテルのお部屋と、翌朝の食事が最高に素晴らしかったのは言うまでもない。
花火であんな贅沢をしたのは、後にも先にもあのときだけだった。
父は気に入ったら何度でも繰り返したいほうなので、一度きりでやめたということは、期待ほど素晴らしくは……彼の口癖を借りれば「デラックス」ではなかったのだろう。
今年の私は、テレビで猫と一緒に中継を見て、やっぱりこれがいちばん楽でいいなと思う。
淀川の花火大会の生中継番組は、花火をしっかり見せてくれるし、カメラワークが年々向上しているし、ゲストの方々の話がうるさすぎないし、なんなら副音声ではトーク抜きで見せてくれるので、言うことなしなのだ。
テレビ大阪さんありがとう。
でも……いやもうこれはタダで見ておいてド厚かましい言い草なのだが。
そしてテレビ中継することを考えると、曲や歌があったほうが間が持つんだろうと理解はするのだが。
全部歌に合わせなくてもいいんじゃないかな、とは思う。
ごく一部でいいから、打ち上げられる花火の音と、見ている人たちの拍手と歓声だけに耳を傾ける時間もほしい気がした。

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椹野道流
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