ちょいちょい書くかもしれない日記(防音)
家を建てたとき、ハウスメーカーに、「うちの建材は防音性が高い」と謎の自慢をされた。
住んでみてわかったのだが、確かに……と思うところはある。
雨音がほとんど聞こえないのだ。
なので、出掛けようと外に出て「うわっ、雨降ってるやん!」と焦ることが増えた。
移り住んでしばらくして、深夜に猪が庭を駆け回り、庭のあちこちに大穴を掘って室外機をちぎり飛ばしたときすら、朝まで気づかなかった。
朝になって気づいた理由は、門扉が破壊されていたことだ。
さすがに何らかの破壊活動が行われたことだけは理解した。
犯人が猪とわかるまでは、いったい誰にどんな恨みを買ったのかと震えたし、わかってからは、隣家の旦那さんに「昨夜たいへんだったね、怖かったでしょう」と慰められても微妙なリアクションしかできなかった。
そのくらい、物音は聞こえない。
でも不思議なことに、人の声は意外と通ってしまう。
隣家の奥さんは、たまに窓を開け放って朗々と歌唱を披露なさるのだが、コロナ禍のリモート講義で、マイクがその歌声を拾ってしまうので閉口したことがある。
たぶん私の声も外に聞こえているんだろうなと思って、あまり大声で歌ったりしないように気をつけている。
建材の防音性は、ある波長の音には無力なのかもしれない。あるいは、窓のせいかもしれない。
よくわからないけれど、人の声が通るのは悪いことばかりではない。
家の中で何かよくないことが起こっているとき、誰にもやりとりが聞こえないのは、ちょっと怖いもんね。
あと、一人暮らしのときはわからなかったのだが、猫5匹と暮らすようになってわかったことがひとつ。
二階の物音が、けっこう一階に響く。
特に、猫が階段を駆け上がる音や、二階でお掃除ロボが低い段差を超える音が、ビシビシと壁沿いに伝わってくる感じがする。
鉄骨の具合だろうか。
まあ別に苦痛なほどではないのでいいのだが。
以前、道を歩いているとき、前を通りかかったお家から人の声が聞こえてきたことがある。
母と娘が口論をしているようだった。
娘が、「お母さんには私の気持ちなんかわからへん!」と怒鳴り、
母親が、「そらわからへんよ、親子でも別の人間やもん。わからんかっても、あかんもんはあかんの。世界の常識やの」と言い返していた。
世界の常識か。強いな……と思いながら通り過ぎた。
娘のリアクションがどうだったかはわからないが、何となく引いちゃったんじゃないかな……と思っている。
母親が振りかざす論理は、わりと理屈でないところで謎のパワーを帯びている。