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ちょいちょい書くかもしれない日記(豆置き)

猫がいるので、豆を撒くには向かない家だ。
故に、紙製の可愛いテトラパックに詰まった炒り豆を、各部屋に無言でちょいと置いていくという、謎の儀式と化した我が家の節分。
もっとも、もの作りをする人間というのはおそらく、身中に鬼を飼っていなければ務まらない。
そもそも鬼遣らいの必要などないので、私のおやつを家じゅうに仕込んでいるようなものである。
昨夜そうやって置いた豆包みを、今朝は末猫がホッケーのパックのように弾き飛ばしながら、廊下や階段で遊んでいた。よきかな。
昨日は施設でも節分イベントがあったらしいが、感染症流行が収まっていないので、例年のように皆を集めて、というわけにはいかなかったそう。
職員さん扮する鬼が、各部屋を回ったんじゃないかな。
炒り豆を高齢者に食べさせられないから、何か大豆製品を食事に、程度のことだったんだろうなと想像する。
単調な毎日にならないよう、季節を感じられるイベントは毎月何かしらやるんですよと、施設長さんが仰っていた。
2月はバレンタインもあるので、準備が忙しいらしい。頭が下がる。
昨年は確か、チョコレートを使った手作りスイーツのプチバイキングを、入居者の皆さんで楽しんだと記憶している。
ちょっと羨ましい。

運転用の眼鏡は、もう目が慣れてきた。
今回、すすめられて調光レンズにしたところ、楽。何これ楽。
冬の陽射しは思ったより強いのだなと実感する日々だ。
マリメッコのフレームには、ちょっとした可愛い細工があって、使うたびに小さく嬉しい。
大人の生活には、小確幸があればあるほどよい。
ただ、今年免許書き替えだと思って新調したのに、確かめたら来年だった。
ねえ、あからさまに来年だったよ! なんで今年だと思ったの⁉
いやまあ、見えにくいときにすぐ作り替えたほうがいいに決まっているので、結果オーライである。
今日は通勤途中、高速道路に大きな落下物があった。
前の車がギリギリで回避したので、突然それが目に入って、けっこう慌てた。
やはり車間距離は十分にとるべき。
落下物注意の電光表示板は、落下物をよけたあとに登場した。おそーい。
もしかしたら、軽そうだったから風で転がって、場所を移動したのかもしれない。
見たところ、発泡スチロールが詰まった巨大ポリ袋だったけれど、その奥に何が入っているかわからないので、触らぬ神に祟りなし、である。

学校からの帰り際、施設から電話。
だいたいそういうのは母の体調が悪化したり怪我をしたりの連絡なので、ヒヤヒヤしながら出たら、母が私に話したいことがあるそう。
代わってもらって、「なーに?」と訊ねたら、「今日はあなたの誕生日でしょう」と言う。
惜しい。だいぶ……いや、同月だからちょっと惜しいということにしておこう。
昨年は忘れていたから、今年はざっくりでも覚えていてくれてありがたい。
もしかしたら、私の本に書いてあったのを見たのかもしれないが。
「悪いけどお買い物に行けないのよ。貴女の枕元にお祝いのお金を置いておいたから、好きなものを買いなさい。ケーキもお願いね」
母はそんなことを言う。
マジで? 
いや、そんなわけはないのだが、一瞬、ちょっとだけ期待した自分がアホみたいで笑った。
実家にいたときと同じことを言っているなあ、と思いながら「うんわかった、ありがとう」と返した。
「ケーキ、自分で買わせてほんとに悪いわね」と重ねて言われた。
子供の頃、母が仕事で忙しいことはじゅうじゅうわかっていたが、「いつも『ケーキ食べたかったら買ってらっしゃい』って言うけど、みんな食べるんやん。お祝いしてもらう人が、なんでみんなのために買いにいかなあかんの」と、怒ってしまったことがある。
当時の私の憤りはよく理解できる。弟の誕生日ケーキは、親が必ず用意していたからだ。
でも、「お姉ちゃんは自分でちゃんと何でもできるから」と、ある意味娘に甘えていた母の気持ちも、今はわかる。忙しすぎたのだ。
認知症になってもなお、そのことが、母の中で私に対する負い目になっているのだな、と切なくなった。
「大丈夫。ちゃんとみんなの分を買ってくるよ。全然嫌じゃないよ。私が好きなのを買うからね」と答えたら、母はとてもホッとした様子だった。
「プレゼント、買ったものを必ず見せてね。楽しみにしてるから」とも言われた。
まだ面会停止期間は続きそうだが、まあまあ声はしっかり出ているのがわかってよかった。
帰宅して、つい枕元を見たが、うちの末猫(容疑者)が机の上から持ち出した目薬がコロンと転がっていただけだった。
現実はそんなもんである。そんなもんでよかった。
むしろ本当に金封があったら、びびり散らかすところだ。
母にいくら貰ったことにしようかな。
気になってた普段使いによさそうな指輪、買っちゃうか! 
ケーキも、ちゃんと買いに行こう。私の分だけだけど。
自分の機嫌は自分でとるし、自分の誕生日は自分で祝うのである。
まだだいぶ先やけどね。

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椹野道流
こんなご時世なのでお気遣いなく、気楽に楽しんでいってください。でも、もしいただけてしまった場合は、猫と私のおやつが増えます。