街道沿いの金属クズ屋さんが儲かるワケ
(令和4年4月26日一部内容改訂)
クズとサキモノの間
当業界が持つ、ユニークな点は「"相場"に左右される」ということです。
ゴミに相場なんてあるのかと言われてしまうと、まあ、よく言われることなんですが、往々にして単純明快な説明のしようがありません。
そうなんです。この業界は、実に「ワケのわからないことが多い」のです。
そして、いわゆる"クズ屋"業界には、大変多くのプレイヤーが存在します。鉄のスクラップに特化した業者さん、鉄以外のメジャーな金属(非鉄)をまんべんなく集荷する業者さん、貴金属を専門で扱う業者さん、プラスチックなどの樹脂をリサイクルする業者さん。挙げても挙げても、それはキリがありません。
言い換えると、参入障壁が低いわりに、専門性を武器に戦っている業者さんがいっぱいいる、ということですし、専門性がないと勝てないということかもしれません。
クズの相場はどのように決まるのか
ここからは、<非鉄金属>に関するハナシ、ひいては「銅」についてのハナシをしながら、本題である「なぜ、スクラップが儲かるのか」という点について言及してみます。
上記は、日本の大手企業が発表する、銅の値段です。銅に関連する事業を営むすべての方々(製品からスクラップ事業まで)が参考にしています。ざっくりとした表現では、「産業用の銅板の日本国内における値段のイメージ単価(建値)」であると考えています。
この"タテネ"を建値たらしめるものは、ざっくり言って下記3つの要素になります。
(1) ロンドン金属取引所(LME)の電気銅の相場
(2) 為替相場
(3) 電気銅をつくるメーカー側が設定するプレミアム値*
(販売に係る諸掛+メーカー側のマージン)
そして、需要家向けの銅を含むスクラップの値段は、<電気銅>を基準にして、いわゆるロジックを決めた上で取引を行います。
それの何%であるとか、それのプラス/マイナスであるとかを、銅スクラップの種類の違い(JIS規格: H2109に定義されている)によって前もって決め、相場変動ごとないし、特定の期間の平均値をロジックに当てはめたものを単価として採用します。
この原理原則は、スクラップを消費する需要家向けの一般的な考え方となります。
ただし、需要家向けに「スクラップを"原料"として」納入できる業者は、限られています。
トヨタの部品サプライヤー群のごとく、直接納入できるティア1を直納(ちょくのう)問屋などと表現します。察しの通り、ティア2やその下部に多くの業者が控えています。ただし、いわゆるケイレツに縛られる必要性は特段ないと思います。
単価の算定方法については、「メーカーに売れるであろう単価から、マイナスいくら」といったかたちで相場が形成され、ティア2以下においては、それぞれの販管費や"思惑"などを考慮した上で、仕入の値段を決めていると思います。
果たしてティア1は、いくらで需要家に納入しているのでしょう?
すごく乱暴な言い方をしてしまえば、需要家向けになにが売れ、いくらぐらいで買ってくれるのか、誰が高く買ってくれるのかということさえ知っていれば、立派に商売ができるということになります。
もう少し緻密さを求めるならば、対象となる金属が、目の前の金属の中にどれだけ含まれるのか、有価物以外のものがどれだけ含まれるのか、また、そのゴミの処理費がどれだけかかるのかといった点を押さえておけば、完璧なワケです。
なにが儲かるのか
そして、もっと突っ込んだ極論を言ってしまうと、"原料"に近いものを買うのではなく、"クズ"を屑同然の価格で引き受けるということです。これが一番儲かることは、言わずもがなです。
タイトルの「なぜ、街道沿いの金属クズ屋さんが儲かるのか」という点ですが、彼らは、"クズ"を「ある程度の高値」で買っています。人の手(安い人件費)なり機械で加工し、貯めて、頃合いを見ながら、"原料"に近いものを、ある程度の高値で販売しています。
これが基本原則であって、これに「スクラップを高値で買う国がある」という点と、冒頭で述べた「相場の変動によって、販売金額が大きく変わることがある」という要素が複合的に混ざり合って、ものすごい利益を生む可能性が出てくるわけです。
次回は、「スクラップを高く買う国」について言及したいと思います。