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またね
「またね!!!」
先日叔父が亡くなったという連絡が入ったその日。もう一つ訃報のメールが入りました。合唱団の指導者でもあり、長年の音楽仲間でもあり、そして近年は私の歌の師匠でもあるバリトン歌手Aさんのお父様。84歳でいらっしゃいました。奇しくもAさんのお誕生日の朝だったそうです。
日曜日の告別式に参列することができました。事前の連絡網では <悲しい会にしたくない。自分はカラーシャツを着ます。そしてみんなで第九を歌い父を見送りたいと思います。> Aさんの意向が皆に伝えられました。
当日はそのため、淡いピンクやラベンダーなどの装いも多かったです。無宗派とのことでお坊さんの姿はなかったのですが、お線香を上げて、その後予定通り、高らかにみんなで第九のサビをしっかりと歌いましたよ。
いよいよお棺に蓋をするその時、彼はそう言ったのです。
「お父さん!またね!」 と。
私もおそらく両親がそうなった際にかけるであろうセリフを目の当たりにし、驚きました。そしてさらに、彼は続けます。
「また歌おう !! また、歌、頑張るからね!!」
私だったらそう言うと確信する言葉を、Aさんは言いました。
またね、また頑張るよ、見ててね。 私はそう思うに違いないわけです。
うっすらと涙は浮かんでいたのかもしれませんが、彼は、明るい声で、何回かそうお父様に言いました。
「お父さん、またね」
確実に一人息子であるAさんを、お父様は見守りますし、いつかまた、親子は再会するのです。
彼は、残されたお母様を支えながら、多くの弟子や仲間に囲まれ、音楽人生をさらに歩んでいかれることでしょう。あっ、ちなみに、お通夜の朝も、数人のお弟子さんのレッスンをしていたとのこと。
音楽をし続けることが、ある意味ご供養になるのかもしれません。
同じ一人っ子の立場、じぶんごとのような気持ちで過ごした一日でありました。