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犬の車中泊 旅の相棒を危険から守ろう 

 時間に縛られることがなく、自由に行動できる車中泊。ホテルに乗ったまま移動できるような旅は、とても魅力がある。私はこれまで400回以上の車中泊を続けてきたが、必ず愛犬を伴ってきた。旅の相棒の安全を守り、快適に過ごさせるには何が必要なのか。ちょっとした工夫さえすれば、犬との旅はさらに楽しくなる。


車内で爆睡するマイヤー君

 私はこれまで、4頭のブリタニー・スパニエル犬と暮らしてきた。現在の相棒は3歳のマイヤー君。雄で体が大きく、体重は26㌔もある。とても活発で明るく、とびきり甘えん坊だ。
 私は荷物の積載量が多く、広いベッドスペースを確保できるトヨタのノア・ハイブリッドを愛用している。市販のベッドキットを入れたため、車内後部は上下の二層構造になっている。
 ノアの座席は3列ある。3列目は跳ね上げてあり、一度も使ったことはない。2列目はベッドの下にあり、二基のシートのうち一基を荷物を積むために取り外してある。
 車中泊では、ほぼセミダブルサイズのベッドに私と妻、それにマイヤーが横たわる。ニトリ製のマットは通常、折りたたんで車内後部に押し込んである。背中をもたせかけるとソファのように快適だ。
 


ノアに設置した仮設ベッド。この上にマットを入れる


ベッドは想像以上に広い。人間2人と犬1頭がくつろげる



マイヤーもお気に入りのベッド

 犬の車中泊で一番大切なのは、徹底した安全対策である。高速道路のサービスエリア、道の駅、海岸、林道など泊まる場所はさまざまだが、当然ながら近くには道路がある。
 とくにサービスエリアでは、犬が車から逃げ出したら一大事だ。駐車場は車の出入りが激しい。高速道路の本線は時速100㌔以上の車が走っている。犬の命が助かる望みはほとんどないし、他のドライバーを事故に巻き込む恐れもある。


座席に付けたリード用のカラビナ

 私は安全対策のため、運転席と助手席、さらに跳ね上げた3列目シートに犬のリードを固定するカラビナを付けている。
 マイヤーが乗車すると、まずはリードの輪をカラビナに通す。車から出す時には、リードをしっかりと握り、最後にカラビナを外す。
 寝るときも例外ではない。主に3列目シートのカラビナを利用し、万が一にもマイヤーが飛び出さないようにする。
 犬に「車が危ない」と言い聞かせても分からない。リードとカラビナは文字通り命綱なのだ。



車内のマイヤー。リードは絶対に外さない


ちょっとご機嫌斜め。でも、おまえのためなんだよ


折りたたんだマットの上のマイヤー。なんとなくえらそう

 リードの固定を確認したら、次はマイヤーが過ごしやすいように気を配る。体を長々と伸ばせるよう、しっかりとスペースを確保する。夏場なら後部席のエアコンを効かせ、窓はカーテンで遮光する。
 犬は熱中症になりやすい。涼しい日でも、窓を閉め切れば室温が一気に上昇する。季節を問わず、油断は大敵だ。
 3代目ブリタニーのチェリーは、9月下旬に訪れた北海道の網走で熱中症になったことがある。その時は北海道が観測史上最高という残暑に見舞われ、キャンプ場で体調を崩したのだ。
 慌てて動物病院に駆け込むと、獣医師は牛や馬が専門で、犬は診たことがないという。それでも親切に手当てをしてくれたおかげで、チェリーは元気を取り戻した。獣医師は「たとえ5分でも熱中症になる」と指摘し、「いざという時には冷たい水をぶっかけなさい」と忠告してくれた。
 ノアのようなミニバンだと、車内の気温は運転席と後部座席でかなり違う。常に犬がいる場所の環境に注意したい。わずかの間でも、締め切った車内に犬を残すことは許されない。どうしてもというなら、窓を全開にすべきだ。何か盗まれても、犬を危険にさらすよりずっといい。


移動中の車内。ゆったり横になれるスペースが必要

 こまめな水分補給も大切だ。なにしろ、犬は全身に毛皮を着こんでいる。休憩時には車から下ろし、水を飲ませて散歩もさせる。もちろん、食事の際もリードを放してはならない。できるだけ、座席に固定したままにすると安心である。
 もしも、サービスエリアなどの駐車場が混雑しているようなら、車内で食事させた方がいい。人が多すぎると犬が興奮し、トラブルを起こしてしまうかもしれない。
 犬を自分のコントロール下に置くためには、基本的なしつけが欠かせない。マイヤーは猟犬ということもあり、私は幼いころから厳しく訓練をした。「待て」と命じれば、リードを放していても、その場で何十分でも待ち続ける。マイヤーはたいへんだったろうが、旅先で命令が聞けなければ自分の身が危うくなる。
 しつけができないまま、犬を連れ出すのは、近場の散歩でも勧められない。犬が勝手に走りだせば、逃げられてしまう。交通事故に遭えば、それで終わり。子どもに体当たりでもしたら、警察ざたになってしまう。


車のそばで食事をするマイヤー


駐車場が混んでいれば、車内で食事をさせる


待て。飼い主の命令を守るしつけが重要

 
 車中泊で就寝する時には、犬をすぐそばに寝かせてやりたい。知らない土地だと、犬だって不安なのだ。飼い主とくっついていれば、どこでもぐっすり眠れる。 
 甘えん坊マイヤーと寝ると、時々えらい目に遭う。彼は寝相が悪く、狭い車内を子ネズミのように動きまわるのだ。
 寝返りをする度に、足で背中を蹴ってくる。時には夢の中で「バウ、バウ」と鳴き、私を起こす。それでも、一緒にいるとあたたかい。

旅先で海を見る


何かを見つけて、興味を示している

 そして、忘れてはならないのが十分な運動だ。犬にとって、車の長旅ほどつまらないものはない。お行儀よく座席に乗っていれば、どんどんストレスが溜まってくる。
 私は車中泊旅行で出る時、必ず自転車を載せていく。マイヤーの散歩は通常より長くし、自転車で思い切り走らせる。九州の雲仙では、調子に乗りすぎ、マイヤーが突然立ちどまったために転倒した。私は手足を打撲して痛かったが、マイヤーは上機嫌だった。
 犬にとってみれば、人間の旅行にいやいや付き合っているのだ。いつも以上にスキンシップをとって落ち着かせ、好きなだけ運動させてあげたい。

運動が足りると機嫌がよくなる。なにをニマニマしてる?

 本音を言えば、金に余裕があるならペット同伴可能の宿に泊まりたい。車中泊でマイヤーと寝ると、何だか寝不足になってくる。今春、三重県のペット同伴民宿に泊まった夜は、マイヤーも上機嫌で良い子だった。
 ベッドに寝たマイヤーは「親方。これだよ。これだよ。今どき車で寝るなんてダサいよ」と、私に笑いかけていた。
 しかし、これからの季節は車中泊に最適なのだ。また出かけるぞ、マイヤー。今度は、もう少し静かに寝てちょうだい。

ペット同伴可能の民宿にて。マイヤーはこちらがお気に入り




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