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ご当地キャラまつりin須崎 しんじょう君が観客を魅了!

 全国のゆるキャラが集まる「ご当地キャラまつりIN須崎」が、高知県須崎市で開かれた。須崎といえば、2016年の「ゆるキャラグランプリ」で1位に輝いた二ホンカワウソの化身「しんじょう君」の本拠地だ。須崎市民として、ここで地元のヒーローを応援しなくては申し訳がたたない。厳しい残暑をものともせず、会場となった須崎湾近くの桐間多目的公園に駆け付けた。

多くのゆるキャラファンでにぎわう会場
  

雨空の下で奮闘する仲間たち

 実行委員会主催、日本ご当地キャラクター協会協力のイベントは、今年で9回目を迎えた。9月15、16の両日に集結したのは、全国の自治体や各種団体、企業などが送り出した87体。主催者によれば、中国、四国地方では最大級だという。
 今年は残念なことに、雨にたたられた。私が出かけた16日午後も、時々強い雨が降った。それでも、ゆるキャラの魅力に取りつかれた人たちは、気にする様子がない。キャラたちも、ステージやそれぞれのブースで力いっぱいのパフォーマンスを見せている。
 

大阪府牧方市の「みっけちゃん」。拾ってもらった神社で巫女としてお手伝い


島根県松江市の「みっくす」。右は北海道の「みるる」

 

香川県の「うどんの妖精♪さぬどん」

出場キャラは「麺類」「魚介類」「柑橘」といったジャンルに分けられている。猫の巫女さん「みっけちゃん」がいたかと思えば、北海道の乳牛「みるる」もいる。キャラたちは、地域の観光資源や特産品をPRするという重い使命を担っているのだ。
 会場の一角でふにゃふにゃしていたのは、香川県の「うどんの妖精♪さぬどん」だった。最初は下駄か食パンのキャラだと思った。近くでカメラを向け、正体は「讃岐うどん」だと気づく。このまま鍋に入れたら、おいしくゆであがるに違いない。

北海道から来た「ジンギスカンのジンくん」。カッパを着こんで出動

 なにしろ雨模様だから、キャラの多くは雨具を着けている。高知の雨は荒っぽく、バケツをひっくり返したように降ることが珍しくない。大切なキャラが風邪をひいたら大事である。
 水色の雨具できめているのは「ジンギスカンのジンくん」だ。顔しか見えないから、ミカンかネコのキャラだと思い込んでいた。イベントのサイトで確かめたら、頭には羊肉を焼く鍋をかぶっているんだと。北海道から遠征してくるとは感心だ。それに、かわいいなぁ。

埼玉県志木市の「カパル」。カッパの仲間か?

 全身緑色の「カパル」は、足を濡らさないためにビニール袋を巻き付けている。歩き回ると脱げてしまうため、お付きの人がガムテープで補修している。なんと、キャラ愛にあふれた姿だろう。カパルの正体はいまいち分からないが、私は感動して泣きそうになった。

大分県日田市の「ナシロー」。宇宙から来た梨星人

 ブースのテントで雨宿りするキャラもいる。「あっ、シカがいる」と近寄ったら、取り巻きの人々に「この子、ナシですから」と怒られた。よく見ると、頭に付いているのは角ではなく枝だ。しかも、宇宙人ということで、なぜか頭頂部が透明になっている。
 このように、ゆるキャラの世界は奥深い。しっかり事前学習をしてから、会場に向かうことをお勧めする。

主役が登場。喝采を浴びる

 そうこうするうち、われらが「しんじょう君」のステージショーが始まった。壇上には他のキャラや可愛いアイドルも立っているが、存在感がハンパない。
 見よ。3頭身の愛らしいスタイル。つぶらな瞳。頭にかぶっているのは帽子ではない。須崎名物の熱々の「鍋焼きラーメン」である。須崎市民なら、その姿を見ただけで感極まる。「しんじょう」という名前は、2012年に絶滅種となった二ホンカワウソが最後に目撃された「新荘川」に由来する。
 しんじょう君は今も、姿を消した仲間を探しているのだという。一見のんきそうだが、実は絶滅という深い悲しみを背負った苦労人キャラ(?)なのだ。国内はもとより、海外出張も度々。その知名度、実力から、私は日本最強のゆるキャラと断言する。


アイドルのお姉さんとトークを交わす。さすがに場馴れしている


赤い水着は夏バージョンの衣装です

 「しんじょうくーん!」。ちょうど強い雨が降り出したが、会場は興奮に包まれた。他のキャラも、格の違いを思い知ったのだろう。歌やダンスが始まると、後ろにさがっている。猫の巫女さんは、キャラ界の巨星を崇拝するかのような動きをしている。さすが、全国制覇を成し遂げた偉人(?)だ。体を包むオーラがすごい。

堂々と主役を張るしんじょう君
ずぶ濡れでステージを見る人たち

 ステージ前には、熱心なしんじょう君ファンがひしめいている。全身ずぶ濡れになりながら、陶酔の表情をうかべている。雨がなんぼのものや。しんじょう君の動きを追い、視線が向けられれば大喜びしている。いやはや、たいしたものだ。まるで「ニホンカワウソ教」の集会である。
 「雨が降って来たから帰るよ」とママに言われた幼子は、「もっとしんじょう君を見る」と、泣いて駄々をこねている。子どもからお年寄りまで、その心を鷲掴みにして離さない地元のゆるキャラだ。
 しんじょう君が「ゆるキャラグランプリ」で頂点に立った翌年の2017年には、それまで200万円しかなかった須崎市のふるさと納税が6億円を突破している。
 この町では、まさに英雄なのだ。もしも、しんじょう君の悪口を言おうものなら「百叩きのうえ、市中所払い」、もしくは「市中ひきまわしのうえ、川流し」になると聞いたことがある(未確認情報)。 


三重県四日市市の「にゅうどうくん」。6歳の妖怪の男の子


滋賀県彦根市の「ビバッチェくん♪」ダム建設が得意なビーバー


松原市の「マッキー」。マツとバラの妖精の女の子

 妖怪、ビーバー、植物の妖精。会場には個性的なキャラが顔をそろえたが、しんじょう君の人気は抜群だ。海と山以外は何もなく、おいしい魚と自然の豊かさだけが自慢。そんな須崎を盛り上げるキャラが、愛されないわけがない。 
 市長や知事の顔を知らなくても、市民ならだれでも親しみを感じるキャラ。いっそ、市長にしたらいいと思う。ついでに自治体名も「しんじょう市」にすれば、少しは知名度が上がるかもしれない。


世界に冠たるしんじょう君


会場では多数のぬいぐるみが売られていた



「須崎にいっぺん来てみいや」と語る

 うっかり雨傘を忘れたため、私は雨に打たれて濡れネズミ状態になってしまった。靴の中にも雨が入り、新荘川に浸かったようだ。
 でも、しんじょう君をはじめとしたキャラはもっと大変なのだ。この日の気温は雨のため29度にとどまったが、湿度は90%に達した。じっとしていても耐え難い蒸し暑さを耐え、跳び回るキャラの苦労はいかばかりか。
 もしもキャラに「中の人」がいるなら、ここで心から感謝の言葉を伝えたい。「須崎によう来てくれたねぇ。カツオのたたきで、冷えたビールでも飲んでや」と。

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