ジミーさん
ジミーさんは、ぼくの“ともだち”で、
きっと、ぼくにとっての初めての“ともだち”。
うん、なんか、すごく誤解のある言い草だけど、
ほんと、たぶん、きっと、そうなんだよね。
ぼくが
ぼくとして
ぼくひとりで
初めてちゃんと
“ともだち”になった人。
「真の友だちは学生時代にしかできない」
って、聞いたことがあったけど、
ぼくが学生時代に出逢って友だちとして一緒にいて、
今でも友だちとして付き合いが続いている人たちは、
実は、みんな「片割れの友だち」なんだよね。
ぼくは片割れとセットだから、
一緒に友だちになってくれた。
――――――
「片割れ」というのは、ぼくの双子の片割れ。
一緒に生まれて一緒に大きくなった「片割れ」。
――――――
とにかく、そんなんだからさ、
たぶん、ぼくひとりだったら、
“友だち”なんて、いなかった。
…と、思う。
――――――
いやまぁ、そんなこと言ったら“友だち”に怒られるかな?
「ぼくともちゃんと 友だち だよ!」って。
――――――
いずれにしても、学生時代も自分自身を誤摩化していたというか、どうして「ぼく」と言っているのか、はっきり言ったことなかったし、自分でもよくわかってなくて説明できなかったから、「本当に素のままの“ぼく”を見えてた人」っていなかったと思う。
うん、なんかまぁ、他の人も大抵そうだとは思うけどね。
学生時代は学生時代で色々と大変だもんね。
素の自分でいたら、あぶない時もあるよね。
――――――
だけどさ、それにしたって「性別」を勘違いされてる人ってそんなにいないでしょ?「性別」って「自分が何であるか」の基礎中の基礎、土台も土台だと思うんだけど…ほとんどの人にとっても、そうだよね?
――――――
えっとぉ…そうそう!
ジミーさんの話しをしてたんだった!
ジミーさんと逢った当初はまだ「“フツウ”の“てい”」で振る舞っていて、「ぼく」とかも言ってなかったんだけど、ナチュラルに「僕は」と言うジミーさんを見てたら、なんか、こう、“もや”っとしてきたというか…なんで、ジミーさんはフツウに当たり前に「ボク」と言えて、ぼくが「ぼくは」って言うと「?」な空気になっちゃうんだろう…説明できないと、妙な誤解を招きそうで嫌なんだけど、でも、なんて説明すればいいんだろう…って、もにゃもにゃ してた。
――――――
ぼくは、「女の子」なんて存在じゃない。
かなり普通にナチュラルに「男の子」で、
それはもうそうなんだけど、だからって、
自分の身体に違和感なんてないんだよね。
そもそもの存在がただ「ぼく」ってだけ。
そんなん、わかってもらえると思う?
――――――
とまぁ、そんなこんなでひとり勝手に「ぬぬぬっ」ってなってたんだけど、もう限界で、「ぼくは“ぼく”なんだから、誤解されてもなんでも、ぼくはもう“ぼく”でいるぞ!」って、ふっきれた。
――――――
…えっとまぁ、「ふっきれた」のはジミーさんとはまた別の人のおかげなんだけど、それはまた別のお話。
――――――
とにかくジミーさんって、とっても丁寧な人で、素朴で、ほわっとした人だから、そんなジミーさんにただ、素のぼくとして「一緒に遊ぼー」って、声をかけたかったんだよね。もう純粋に、ただ遊びたかった。そんだけ。
だからまぁ、「ふっきれる」前からガマンならなくて、
『実は「ぼく」が自然な一人称なんです。』
『正直、自分は妙な性自認なんですよね。』
なんて、ぼそっとつぶやいてたんだけどね、ジミーさんに。
うん、まぁ当然、ジミーさん「?」って顔してたけどね!
だけど、何もきかないでくれたんだよね。
ただ「そうなんですね」って感じだった。
だから、「ふっきれた」は「ふっきれた」んだけど、まだ自分をちゃんと説明できていなかった時に、『やっぱりちゃんと説明できるように向き合ってみようと思う』って伝えられたのはジミーさんだった。
そうして「自分を説明できる言葉」を見つけられた。
本当のきっかけをくれたのは「ジミーさんとはまた別の人」なんだけど、そのきっかけから、ぼくの話しに付き合ってくれたのがジミーさんだった。
だから、「自分を説明できる言葉」見つけた瞬間に、躊躇なくその事実を伝えた三人のうち一人はジミーさんだった。
因に、その三人の他二人は「片割れ」と「ジミーさんとはまた別の人」。
――――――
実は、「片割れ」とでさえ、ぼくらのこの「形容しがたいアイデンティティ」について、ちゃんと共有したことはなかった。それくらい、何とも言い難い、曖昧模糊とした「gender identity(性自認)」なんだよね。
――――――
そんなわけで、ジミーさんは“ともだち”なんだ。
何だかよくわかんないこの“ぼく”を、
「…正直よくわかってないです💦」
って正直に言えるジミーさんだから
何だかよくわかんないんだけど、
「レイさんはレイさんなんだな」
ってただ普通にいてくれる
ジミーさんだから、
“ともだち”なんだ。
ぼくが
ぼくとして
ぼくひとりで
初めてちゃんと
“ともだち”になった人。
それが、ジミーさん。
ぼくの、ともだち✨