賃金を廃止しましょう
賃金とは、労働者が労働に対する報酬として受けとるお金のことです。
資本主義経済では、資本家は、労働者から労働力を買って、労働者を雇います。この賃金の支払いと受け取りが、支配と被支配の関係を生み出します。
労働者は、お金を受けとる代わりに働きます。働き方は、自由に決めていいわけではなく、資本家のいう通りに働かなくてはなりません。労働者は、労働を強制されるのです。
賃金を受けとる労働者は、奴隷と同じです。賃金奴隷という奴隷なのです。
今まで、賃金という支配、被支配の関係を保存したまま、労働者の労働条件を改善する取り組みが行われてきて、昔に比べて労働者の労働環境は良くなってきました。しかし、このアプローチは、改良主義といって、根本的な支配と被支配の関係は何も変わらないのです。
資本家は、労働者に賃金を支払う限り、労働者を支配することができます。労働者は、資本家から賃金を受け取っている限り、奴隷と同じです。
この支配と被支配の関係をなくすためには、賃金を廃止するしかありません。
労働者は、労働に対する報酬としてお金を受け取ってはいけないのです。労働者は、労働を売り物にしてはいけないのです。資本家は、労働者から労働力を買ってはいけないのです。
「言うことをきくから、お金をください」
賃金奴隷は、そう言って働いてお金を稼いできました。でも、これからは、それではいけないのです。
「お金をあげるから、言うことをききなさい」
資本家は、そう言って、労働者から労働力を買ってきました。でも、これからは、それではいけないのです。
では、賃金の廃止された世界というのは、どのような世界でしょうか?
まず、お金を得るために働くということがなくなります。では、人は、お金を得るためにどうすれば良いというのでしょうか?それ以前に、お金を得ようとする意味があるのでしょうか?
賃金を廃止すると、サービス全般が受けられなくなります。サービスは、役に立つ働きのことで、働きは売ってはいけないからです。ただし、物はかろうじて買えます。
しかし、その物さえ生産できなくなります。なぜなら、物を作るためには労働力が必要ですが、労働力を得る手段が禁止されているからです。したがって、お金があっても物も買えません。物がないからです。
このように見てみると、賃金を廃止した世界では、産業が止まってしまいます。物を生み出すこともできなければ、物を提供することもできなくなります。
社会は成り立ちません。
どうしましょうか。賃金という支配と被支配の関係を生み出す鎖は、あった方が良いのでしょうか?でも、それでは、賃金奴隷を肯定することになってしまいます。
資本主義社会では、資本家が支配階級で労働者は被支配階級です。このような階級はあった方が良いのでしょうか?そうじゃないと社会が成り立たないのです。
しかし、被支配階級の労働者は自由を抑圧されてしまっています。それは良くありません。やはり、被支配はない方が良いと思います。
賃金が廃止された世界では、労働者は、代価としてのお金を受けとるために働くということをしなくなります。では、労働者は、一体何のために働くのでしょうか?
いいえ、労働者は、もはや働かなくて良くなるのです。労働者階級が生まれた理由は、資本主義の構造によってだと思うからです。
資本主義は一種の奴隷制度で、人を労働に縛りつける装置だったのです。資本主義のおかげで、社会も文明もここまで発達したのです。
しかし、その代償は、労働者の奴隷的隷属でした。賃金を廃止すれば、確かに労働者は労働から解放され、自由になりますが、その代わりに社会は崩壊するのです。社会が崩壊すれば、結局労働者も生きていけなくなります。
ですから、賃金を廃止しても、社会が崩壊しない未来を思い描く必要があります。その未来はまだ描けていません。
マルクスは、資本主義が終わった後の世界をあまり描かなかったと言います。この、賃金を廃止した後の世界を思い描くことは、マルクスから出された宿題のようなものでしょう。
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