【小説】アスペルガー症候群という発達障害と統合失調症という精神障害を持つ竹本倫紀は、生活保護を受給して暮らしています【第1話】生活保護制度のある日本に生まれて良かったです

竹本倫紀(たけもとみちのり)は、アスペルガー症候群という発達障害と統合失調症という精神障害を持つ障害者です。2023年7月11日火曜日現在、就労継続支援B型事業所のサラダボウルで、販売戦略担当者として、時給100円の工賃を受け取りながら1日4時間働いています。職場では、作業時間中に休憩することもあり、休憩中は工賃が発生しないため、1か月に約22日働くのですが、基本給は約6000円です。基本給の他に、勤務手当、通勤訓練手当、通勤手当などが付いて、工賃の総支給額は約20000円です。

1か月に収入が約20000円だけでは、生活していけません。

そんな倫紀が生活していけるのは、生活保護を受給しているからです。

倫紀は独り暮らしです。両親は既に他界していて、きょうだいは姉2人、妹1人の4人きょうだいですが、上の姉と妹は結婚して家を出ていて、2番目の姉も独立しているため、倫紀は独り暮らしなのです。

生活保護制度には収入申告という手続きがあります。受給者に、どんな収入があったのか、当局に報告するのです。収入申告の用紙の中に、仕送りがあったか無かったかを書く欄があります。倫紀は、基本的に仕送りを誰からも受け取っていないため、仕送りは「無し」と報告しています。

きょうだいや親族は、生活困窮者の扶養義務があるのですが、財力が十分ないときは免除されます。倫紀のきょうだいにも、倫紀のことを扶養する義務があるのですが、それぞれの家計がギリギリなので、倫紀を扶養するために倫紀に仕送りする余裕がありません。そのため、倫紀のきょうだいは、倫紀を扶養するための仕送りをする義務を免除されています。

倫紀は、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業の金銭管理サービスを利用しています。このサービスは、生活保護を受給するための手続きをしたときに、利用するように市役所の係の人にお勧めされました。生活保護を利用しても、お金の管理ができないと、結局生活に困窮してしまうので、きちんとしたお金の管理をしながら生活保護を受給する方が、お金を管理せずに生活保護を受給するよりも良い、と、お勧めされました。倫紀は、生活保護は生活していくのにギリギリの金額しか支給されないので、きちんとした金銭管理をする必要があると思いました。そのため、倫紀は、金銭管理サービスを利用することにしたのです。

金銭管理サービスは、毎週金曜日に、支援員さんが倫紀の家まで来て、お金を渡してくれます。お金の確認と、書類への署名をして、お金を受け取って利用完了です。その週にいくら出金してもらうかは、その週の水曜日までに社会福祉協議会の日常生活自立支援事業金銭管理サービス担当者に要望を提示します。メールで、社会福祉協議会の携帯へメッセージを送って要望を提示したり、市の暮らし相談窓口に電話して、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業金銭管理サービス担当者に直接話して要望を提示したりします。

金銭管理サービスでは、年間の予算を組み、支出の仕分けもきちんと行い、収入がいくらあるのか、収入がいくらある予定なのかなども考慮して、お金が足りなくなるという事態が生じないように配慮してくれます。そのため、倫紀がある要望を提示しても、その要望を聞き入れる予算がないという理由で、要望が拒絶されることもあります。要望が拒絶されたときには、自分のお金なのに自分の自由にならないのは不自由だと思うときもありましたが、予算がないという理由があるので、つまり、その要望を聞き入れるだけのお金がなかったということなので、逆に助かっています。助かる理由は、自分の好きにお金を遣ってしまい、本当に必要な分が足りなくなると大変であり、そういう事態にならないように金銭管理サービス担当者が配慮してくれているからです。

倫紀は、生活保護を受給し、金銭管理サービスを利用して良かったと思っています。その理由は、倫紀には障害があり、一般就労が困難で、そのままでは生活不能のところを、生活保護という社会保障を利用することにより、人間らしい暮らしができているからです。

世界人権宣言の第25条第1項に、次のようにあります。

すべて人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利並びに失業、疾病、心身障害、配偶者の死亡、老齢その他不可抗力による生活不能の場合は、保障を受ける権利を有する。

世界人権宣言によれば、すべて人は、不可抗力の生活不能の場合は、保障を受ける権利を有するのです。

倫紀の場合は、アスペルガー症候群という発達障害と統合失調症という精神障害を持つため、心身障害の不可抗力による生活不能に該当します。これら文章を根拠に、倫紀は、生活保護制度という社会保障を受ける権利があると言えます。そして、倫紀は、その権利を行使しました!その結果、倫紀は、生活保護を受給して暮らしているのです。

すべて人は、不可抗力による生活不能の場合は、保障を受ける権利を有するのです。大切なことは、権利があるということで、その権利を行使するか行使しないかを選択するのは本人だということです。倫紀は、保障を受ける権利を行使しました。倫紀は、心身障害の不可抗力による生活不能を放置して、野垂れ死ぬのは嫌でした。だから、権利を行使したのです。

生活保護については、他にも根拠とする文書があります。

日本国憲法第25条第1項には、次のようにあります。

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

この文言により、生活保護制度では、健康で文化的な最低限度の生活を営むのに必要なお金を、生活保護受給者に支給しています。

ここでも、大切なことは、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するということです。あるのは権利です。この権利を行使するか行使しないかは、本人が選択します。倫紀は、すべての国民にある、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を行使しました。その結果、倫紀は、生活保護を受給しているのです。

生活保護制度という社会保障を受けるためには、基本的人権について理解する必要があります。世界人権宣言第25条第1項も、基本的人権についての文書ですし、日本国憲法第25条第1項も、基本的人権についての文書です。

基本的人権という思想が本格的に世界的に広まったのは、第二次世界大戦終結後のことでした。当時の人類は、なぜ二度も世界大戦が起きてしまったのか反省し、基本的人権を軽侮したことが大きな原因だったと結論したのです。そこで、世界人権宣言が国連で採択され、基本的人権を尊重することが世界的な潮流となったのです。

2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し、ウクライナ対ロシアの戦争が始まりました。この戦争も、基本的人権を軽侮しているがゆえに起きています。

世界人権宣言第3条には、次のようにあります。

すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。

すべて人は、生命の安全に対する権利を有するのです。これは、言い換えれば、すべて人は生存する権利を有するということだと思います。

戦争は、すべての人にある、生命及び身体の安全に対する権利を軽侮しています。なぜなら、戦争では必要に応じて敵兵を殺傷しますが、敵兵もすべての人に含まれるからです。世界人権宣言の精神で考えれば、敵兵を殺傷して良いということにはならないのです。

世界人権宣言の精神で考えれば、敵兵を殺傷して良いということにはならないということにも、根拠となる文書があります。

世界人権宣言第29条第2項には、次のようにあります。

すべて人は、自己の権利及び自由を行使するに当っては、他人の権利及び自由の正当な承認及び尊重を保障すること並びに民主的社会における道徳、公の秩序及び一般の福祉の正当な要求を満たすことをもっぱら目的として法律によって定められた制限にのみ服する。

すべて人は、自己の権利を行使するに当たっては、他人の権利及び自由の正当な承認及び尊重を保障することが求められているのです。他人の権利及び自由の正当な承認及び尊重を保障すれば、敵兵を殺傷して良いということにはならないですよね?

また、世界人権宣言第30条には、次のようにあります。

この宣言のいかなる規定も、いずれかの国、集団又は個人に対して、この宣言に掲げる権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を行う権利を認めるものと解釈してはならない。

この文言は、すべて人には、戦争する権利はないことを言っています。戦争は、世界人権宣言第3条の生命及び身体の安全に対する権利を破壊する目的の活動だからです。

世界人権宣言の精神が、全世界の全人類の念頭にあれば、自由で、安全で、平和な、暮らしやすい世界になるでしょう。世界人権宣言の精神が、実現した世界に対する権利というのもあるのです。

世界人権宣言第28条には、次のようにあります。

すべて人は、この宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に対する権利を有する。

この文言は、すべて人は、世界人権宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に対する権利を有する、と言っています。

この権利を行使するとしたら、次のようになるでしょう。

「私は、世界人権宣言第28条の権利を行使し、ウクライナとロシアが戦争を直ちに止めて、世界人権宣言第3条に規定する、すべての人の生命及び身体の安全に対する権利を尊重するという国際的秩序を求めます!」

すべての人が、安全に暮らせる社会的秩序に対する権利を行使して、すべての人が、安全に暮らせる社会を築いていきましょう。倫紀は、すべての人が、安全に暮らせる社会を築いていきます。あなたも、倫紀と一緒に、基本的人権について学びながら、すべての人が、安全に暮らせる社会を築いていきましょう!

幸いにして、日本は平和です。日本では、日本国憲法の基本的人権の項で、生存権について規定があり、この規定を根拠に生活保護制度が実施されているので、倫紀は心身障害があっても社会保障を受ける権利があるため、倫紀は社会保障を受ける権利を行使して、生活保護を受給して暮らしているのです。

なんとありがたいことでしょうか!日本に生まれて良かった!倫紀は、また、基本的人権について学んできて良かった、と思うのでした。

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