月の溶岩トンネル(溶岩チューブ)
科学小説「月からの手紙」は主に2006年に書いたもので、日本の月探査機「かぐや」(SELENE) 打ち上げの前年でした。
物語に登場する「虹の入江基地」は、地下に広がる溶岩トンネル(溶岩チューブ)内に作られているという設定です。
月の溶岩トンネルとみられるものは、「かぐや」の観測から実際に発見されています。こうした月の地下空洞は、月の表面とは異なり有害な宇宙線(宇宙からの放射線)や隕石から守られ、温度もマイナス20℃度前後に保たれているという見積りもあり、将来の基地建設地として期待されています。
月面の地下6mほどで宇宙線の影響はほぼなくなります。4mでも胸部レントゲンを1度受ける程度。
資料:
参考:身の回りの放射線(環境省サイト)
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/kisoshiryo/attach/201510mat1s-01-6.pdf
赤道に近いアポロ着陸地点では、昼夜で温度がプラス111℃~マイナス171℃(282℃の変動!)。赤道付近の地下20cmでは変動が約10℃、40cmでは1℃ほどの変動しかなく、マイナス20℃程度でほぼ一定ということです。
これは月の表土 (レゴリス)の特徴のひとつ、熱がたいへん伝わりにくい、断熱性に優れていることが理由です。地下10mの溶岩トンネルでは、マイナス35℃~マイナス20℃と推定されています。
資料:Lunar Base
https://www.sciencedirect.com/topics/physics-and-astronomy/lunar-base
上写真:ハワイ島キラウエア山の山頂近くにある溶岩トンネル(溶岩チューブ)Credit: D. Boyle, NPS. Public domain. 出典:https://www.usgs.gov/media/images/n-huku-thurston-lava-tube-near-k-lauea-summit-0
ヨーロッパ宇宙機関では、月の溶岩トンネル探査を計画しています。
月には、溶岩トンネルの天井崩落とみられる縦穴が多数見つかっています。(冒頭の写真はその一部)
月面の地下、溶岩トンネル(溶岩チューブ)を利用した居住空間の想像図があります。
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