なごみの湯(荻窪)/サウナねこニセモノ蒸され旅
寒い時こそ、サウナだ。
都内に大雪警報が発令された日のこと。仕事を早じまいし、荻窪「なごみの湯」へ向かった。こんな寒い日は、サウナに限る。
東京駅から高尾行の中央線に乗る。その時点では雨だった。「警報は空振りか~」などとのんきにしていたら、途中の阿佐ヶ谷で屋根が白くなっていて驚いた。23区といっても、中央区と杉並区では天気が全く違う。
荻窪駅前も雪が降っていた。歩道にシャーベット状の雪が積もる。うっすらというより割としっかり積もっていて、歩を進める度に靴を濡らす。明朝凍結したら恐ろしいタイプの水分だ。
「なごみの湯」は駅前、コメダ珈琲店の隣にある。こんな街中の商店街に、スーパー銭湯があること自体が素晴らしいしうらやましい。
フロントでタオル、館内着、ロッカーのカードキーを受け取る。入場料は後払いだった。
女性の風呂は2階にある。ロッカールームは意外に広い。ロッカー内にハンガーが2本、プラスチック製の小物入れが備え付けてある。地味なことだが、案外助かる。
サウナの祭壇
大浴場には高濃度炭酸泉、シルキーバス、ジェットバス、水風呂がある。それぞれの浴槽はさほど大きくはない。洗い場も決して広くはない。考えてみたら、ここは駅前の商店街のど真ん中で、しかもビルの中だ。コンパクトな設えでも致し方ない。逆に「よくぞコンパクトに収めてくださいました」と設計者を称えたい。
ドライサウナとスチームサウナ、浴室内にととのい椅子も5~6脚ある。
ドライサウナは2段で、MAX12~13人といったところ。熱源のストーブ、オートロウリュ、ヴィヒタがセンターに鎮座ましましている。まるで祭壇のようなレイアウトだ。思わず拝みたくなる。
温度は上段86℃、下段80 ℃前後。温度はさほど高くはないが、オートロウリュによるこまめな加湿でじわじわと発汗する。長く入っていても苦しくならない。オーク&ミントの薫りだそうで、ヴィヒタ香がほのかに漂っている。快適だ。
テレビあり。日テレ「news every.」で各地の雪の情報を伝えていた。画面に映った八王子は白銀の世界。首都圏民からしたら大雪だ。八王子に近い荻窪、そりゃあこれだけ雪も降る。
荻窪で名湯「つるつる温泉」
水風呂は「水風呂にしては大きい」サイズの浴槽。水温は18℃で、肌あたりがやわらかい。いつものように膝までと、手首までを10秒ほど浸けた。水風呂に全身浸かるのが苦手というお仲間は、足首・手首を浸けるだけでも十分クールダウンできるので試してみていただきたい。
サウナから出てしばらく、浴室内のととのい椅子で休憩していた。が、こんなにサウナに力を入れたている施設に外気浴スペースがないわけがない。もしやと思いいったん浴室を出る。
そういえば、大浴場と脱衣場との通路は三叉路になっていた。まだ足を踏み入れていないもう一つの通路、その先へ向かう。
扉を開けると、4~5人入れる浴槽が一つと、洗い場・シャワーが二つ三つあった。浴槽の湯は「つるつる温泉」。東京都西多摩郡日の出町の名湯だ。そこから温泉を運んできているらしい。まさか荻窪でつるつる温泉に入れるとは、しかもこんな寒い日に。ありがたい。
鉄道好き垂涎の外気浴
外気浴スペースはその奥にあった。ウッドデッキにととのい椅子・インフィニティチェア合わせて8脚。周囲にぐるりと葦簾が巻かれており、外の様子は伺い知れない。が、音は聞こえてくる。葦簾に打ち付ける霙の音に混じって、時折、いや結構頻繁に、中央線の発着音が聞こえる。すぐそこは荻窪駅だ。目をつぶって、耳をすます。
ダダンダダン、ダダンダダン、ダダンダン……キィーーー、シューーー。
これは鉄道好きにはたまらない。きっと強者の「音鉄」は、この音だけで車両の型もわかるのだろう。私にはそんな特異な能力はないが、列車がステップを踏む(と私は呼んでいる)音を聞くだけでウキウキしてくる。
いや、音しか聞こえないからこそ、駅の情景が豊かに想像できる。今、たくさんの人が電車から降りたのだろうな。ズボンの裾まで雪で濡らした人たちが、傘から雨粒を滴らせて、あたたかい車内に乗り込んでいるのだろうなーー。
騒がしい駅前の雑踏の音も、葦簾を隔てたここからは心地よいBGMに聞こえる。子守唄の如くずっと聞いていたいーーが、いかんせん寒い。寒すぎる。冬こそ外気浴、が信条の私だがさすがにこたえる。子守唄のようだといって眠ってしまったら、高確率で生命にかかわる。
5~6分でデッキを辞し、三叉路を戻りサウナであたため直す。温泉にも浸かる。これを4回繰り返した。いい感じに身体が軽くなった。
この施設、5階がロウリュのフロアになっている。アウフグースイベントが開かれたり、セルフロウリュができたりするそうだ。
おまけに隣接のコメダ珈琲店の一部メニューも館内で食べられるという。サウナで小倉トーストが食べられるなんて、パラダイスではないか。今度は一日かけて訪れたい。
場外サウナ麺「はなや」の野菜タンメン
外へ出ると、雪はほぼ雨に変わっていた。泥で汚れた雪が歩道脇にみっともなくうずくまっている。
腹ごしらえをすべく、駅前の中華料理屋「はなや」に入った。野菜タンメンにワンタンをトッピングしてもらった。野菜の山の隅っこに、所在なさげにワンタンが3切れ身を寄せあっている。
スープの塩気が、思いきり汗をかいた後の五臓六腑に染み渡る。体が塩分を欲していたのだ。もともとおいしいであろうタンメンが、5割増でおいしく感じた。
ラーメンをおいしく食べたければ、断然サウナ後だ。
【2023年2月の情報です】