藤の楽園
よく行く公園の駐車場が有料になった。4月16日から来月5月5日までの期間限定だ。
この期間は公園の藤の花が咲く。藤まつりのこの期間だけ、駐車場が有料となるのだ。
公園に隣接してスターバックスがあり、そことの共有の駐車場なので、年に一回、この期間だけは、スタバでお茶するだけでもエキストラで500円支払わなければならない。それだけ考えると、損した気持ちになるのは当然だ。
でも、思考はそこには留まらない。それが意味するもの、意図するところ、私はそういった見えない部分を想像することが好きだからだ。公園の管理元は市なので、市民の税金で管理をしているはずだが、収益は多分、藤の花の管理に当てるのだろう。だからそんなふうに想像していた。
この公園では、藤だけでなく、四季折々の花が楽しめる。
ソメイヨシノが散って、八重桜の満開が終わりに近づき、ちょうど今が藤の時期で、その後には蓮の花が咲く。
公園は大きな池を中心に、西側には頂上に古墳群を抱く小さな山がある。ここが散歩コースに人気だ。毎朝歩いている年配の方が多い。所々でコミュニティができている。
頂上まで結構な坂道が続き、軽く息が上がってきて、びっしょりと汗をかく。初めて犬と歩いた時は、おじいさん、おばあさんに抜かれた。彼らは同じペースを崩さず、黙々と歩いている。まるで自分の体との対話をしているように見える。
習慣的に歩くようになって、その気持ちがよくわかるようになった。同じコースを歩くことで、体の調子がよくわかるのだ。
今日は有料期間を承知で、犬と散歩に行ってきた。やはり気になったのだ。支払った人だけが見られる景色がどんなものか、いつもの公園とどう違うのか、興味が湧いてきたからだ。
駐車場には、いつもは無いゲートができていた。藤の花を、一年かけて管理してくれているお礼の気持ちを込めて支払わせてもらった。
行ってみたら、想像以上だった。
艶やかに咲く姿、頭上からうっとりする香りが降り注いでくる。
思わず、きれいだねえ、と犬に話しかける。言葉にせずにはいられないのだ。
藤枝という美しい名前の町に、市の象徴である花が咲いている。一年で今だけの世界が広がっている。