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スパイスを使った香水つくり

いよいよ9月、と意識したら不意に新しい香水を作りたくなりました。出来上がった香水には、12種類の精油をブレンドしました。そのうちの4種類はスパイス。ということで、今日は、スパイスの香りが香水形成にもたらす役割についてお話しします。

さて、今回香水を作るにあたり、ハートノートに置きたい香りは既に決まっていました。それは、ローズアブソリュート。このローズの香りをどう引き立てるのか、その話に入る前に、ローズの精油について少し触れておきますね。これを使うということが、私にとって大きな意識改革になったからです。

ローズアブソリュート、この贅沢な香りは、私にとって犯してはならない聖域みたいなものでした。薔薇を主役にする香水を自分のために作るなんて贅沢の極み…そんなふうに思っていたのです。

私が扱うグリーンブレスでは、5mlで約20,000円もする高価な精油、そしてこの香り一滴を<最高の状態>で手に入れるためにどれほどの時間と人の手を必要とするのかを知ってしまったら、神聖視してしまうのも仕方ないかなと思ってしまいます。

ああ、いい香り…、と思う香りはそれだけで豊かな気持ちにさせてくれるものですが、合成香料ではなく、精油を使った香水には、植物の生命エネルギーが宿されていると言っていいでしょう。植物を食物として食べたり飲んだりして体内に取り入れることの他に植物のエネルギーをいただく方法が、香水として纏うこと。そんなふうに言い換えてもいいのです。

ここで話は戻りますが、なぜ、香水つくりにスパイスが出てくるのだろうって思いませんか?実はスパイスって、既にたくさんの調香に使われているのです。例えば、ブラックペッパー。ハイブランドのメンズフレグランスに柑橘系と合わせてトップノートに使われています。

時代をさかのぼってクレオパトラの頃、クレオパトラはバラの香りにクローブを忍ばせて、「ただいい香りの薔薇」ではない、「忘れられない薔薇の香り」を作り出しました。

このように、果物や花の香りの奥の方から微かに香る、辛いような苦いようなそんな鼻腔にひっかかり、「何?」と興味をそそられてしまう、そんな名脇役がスパイスです。先にお話ししたように、今回調香する香水の主役はローズです。単体で既に完成されたローズの香りを、ただのいい香りの薔薇、で終わらせないために、名脇役に登場してもらうのです。

今回私が選んだスパイスの香りは、ブラックペッパー、カルダモン、クローブ、ジンジャーの4種類。ブラックペッパーとカルダモンはトップノートの香り立ちの脇役に、クローブとジンジャーはハートノートのローズの脇役に指名しました。

さて、ここからは、どのようにしてこの4種類を決めたのか、お話しします。

「スパイス」と私たちは呼びますが、元々は植物です。スパイスを植物として見たときに、どのような特徴を持っているのか、姿、形、生態系、さらに古き時代に人とどのように関わってきたのか、それらを想い描きながら香りも嗅ぎつつブレンドリストを作っていきます。

例えば次のように植物を表してみます。

ブラックペッパーは蔓(つる)性、他の木に絡みついて実る...


クローブの釘のような形、あれは蕾、これから花を咲かせようとするエネルギーが内在している...


カルダモンの実の中で弾けるのを待つ小さな種たち、アルコール臭をごまかすために男たちが噛むと言う...

どの香りを使うのか、それを決めていく際には<内観>を行います。出来上がる香水を纏う自分が、「どんな自分で在りたいか」それを意識します。そうしますと、そのイメージと共鳴する植物(香り)を見つけることができます。例えば情熱的で在りたいのか、冷静沈着で在りたいのか、繋がりを拡げていきたいのか、むしろ古きを断ち切って新しい世界へと一歩踏み出したいのか、内観し言語化します。あなたのその在りたいイメージと共鳴する姿、特徴、歴史を持った植物が精油瓶50種類以上の中のどこかに存在します。それらをブレンドした結果、今のあなたに共鳴する、今のあなたにとって唯一無二の香水に出会うことができます。

未来は今が創っていきます。今を1ミリ心地よくしてくれるだけでなく、在りたい姿にフォーカスさせてくれる。アロマ香水にはそんな力が宿っています。




今回、自分のために創り上げた香水には、実は、ごく少量のコーヒーやイランイランの香りも忍ばせています。意外性、これは自分ではなかなか見つからないことも多く(気づかぬ振りをしていることも…)、ご本人にしたらピンとこない場合もあるのですが、お話を聞いているうちに私の脳裏に意外性の植物がひらめき、それを隠し味として使います。これも意図せずともあなたのスイッチをオンにする要となるのです。






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