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一文の長さはなぜ「40~60文字」が読みやすいとされているのか?心理学者が提唱
多くの書籍やWebページで読みやすい文の長さは「一文40~60文字」であると述べられています。
もちろん、違う主張の書籍やWebページもあります。
なぜ「40~60文字」なのか根拠を調べてみました。
■ この記事を書いている人
Webコンサルタントで、大学の非常勤講師。
大学ではWebライティングの講義を受け持っています。
心理学者が導き出した数字
「一文40~60文字」は、1960年代、心理学者の波多野完治先生がアメリカの文章心理学をもとに日本語に応用し、導き出した数字です。
「一文平均40〜60文字以内」だと読みやすいと述べられています。
波多野 完治
日本の心理学者(文学博士)。
文章心理学、創作心理学、視聴覚教育など著書多数。
(1905年2月7日 - 2001年5月23日)
波多野先生は、新聞社に一文平均40~60文字以内におさまるように書くことを提案しました。
新聞は、当時一文がやたら長く、平均90~100文字だったのです。
ここでストップ!
ちょっと待った!
60年以上前の日本語って、今とは違いませんか?
波多野先生は私より75歳年上、私のひいおじいさんくらいの年齢です。
第一次世界○○のときからいらっしゃいます。
国のために命を投げ出す時代。
※国家に関わるキーワードなので伏せています。
波多野先生は40歳頃まで旧字体(いまの台湾が使っている字画数の多い複雑な漢字)を使用し、50歳になるにつれて書籍が新字体に変わっていくのを経験されています。
「一文平均40〜60文字以内」論を提唱された1960年代は、波多野先生60代のころ。
カタカナ言葉が少なく、英語の略字を使うこともほぼない時代です。
※カタカナ言葉の例:コミュニケーション、マーケティング、スマートフォン。
※英語の略字の例:SNS、IT、ATM。
文字数について、大昔の研究結果なのでいまに当てはまるか疑問です。
いまはWebで簡単に調査できるので、調査すればいまのデータを知ることができるでしょう。
そこで、私が実際に調査してみました。
と言えるとかっこいいのですが、調査していません(すみません)。
心理学者に直撃インタビュー
ここからは、波多野先生に直撃インタビューできたらという設定で話を進めます。
私「先生、今日はよろしくお願いします」
波多野先生は私のノートPC画面に表示されたウィキペディアをご覧になり「入試に落ちたことが載っている」と、へこまれています。
先生「これって消せないのかね?」
私「消せますけど、またすぐ書かれますよ。
ところで、先生、一文の長さは40〜60文字以内が読みやすいという先生のご意見ですが、60年後の2022年でもそのままになっています」
先生「えっ?!もう日本語だいぶ違うでしょ」
60年経っているにもかかわらずいまだに使われていることに対して「ちょっと意味分かんない」って顔をされています。
私「先生、一文40〜60文字以内について先生のご意見をお聞かせください」
先生「新聞が一文平均90~100文字なのはおかしいでしょと言いたかったんだよね。
たしかに当時は一文40~60文字以内にするとよいと研究結果を伝えたよ」
私「先生は文字数に強いこだわりがあったのですか?」
先生「私はただ簡潔に伝えてほしかっただけだよ。
長い文ってストレスでしょ」
文字数はさておき、簡潔に伝えることが大事というのは現代でも通じるのではないでしょうか。
※以上のインタビューは私の勝手な想像です。
ここから元に戻ります。
波多野先生による「一文40~60文字以内」提唱後、新聞社は書く目的により一文平均30文字程度、一文平均30~50文字以内等、簡潔に表現するようになりました。
■ 1文の長さは40文字以内にする
1文の長さは40文字以内、長くても60文字以内にしましょう。
長い文はなくします。
参考:
松林 薫『迷わず書ける記者式文章術』
波多野完治『現代文章心理学』『実用文の書き方』『文章心理學入門』
小説など芸術的な文章でも短い文がよい
小説など読み物は長い文がよいのではと思われるかもしれませんが、むしろ短い文がよいです。
谷崎潤一郎は『文章読本』のなかで、小説こそ短く簡潔な文であるべき、短い文で表現できる人のほうが芸術的な手腕があると訴えています。
後続する現代の文学者や小説家、翻訳家にも同意見の人が多いです。
Webライティングでは短い文にする必要あり
Webでは紙媒体と異なり全体を見渡すことができないので、短い文で簡潔に書くことが求められます。
論理立てて伝える実用文章から小説などの芸術的な文章まで、Web用の文章を書くときには必ず「短い文」にしましょう。
環境により見え方が異なる、画面が発光しているなど、読む以前の問題として「見る」ことがストレスですので常に配慮しましょう。
ここでは、「一文平均40〜60文字以内におさまるようにしよう」論で進めます。
では、実際に普段の自分の文字数を調べてみましょう。
一文の文字数を計測してくれるWebツール
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普段の自分のライティング傾向を可視化することができれば改善できます。
自分は一文どのくらいの文字数で書いている傾向にあるのか。
どのような場合に長い文になりがちなのか。
文長さ計測[αテスト中]
文長さ計測とは、文の長さを計測して度数分布を表示するWebサービス。
文章を入力すると、文章を構成する文の長さを計測して度数分布を表とグラフで表示してくれます。
試しに私が過去に書いた記事のテキストを調べてみました。
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文の終わりに出る赤色の数字が文字数です。
上から22文字、32文字、36文字、30文字、46文字となっています。
・一文どのくらいの文字数で書いているか
・どのような場合に長い文になるのか
一度確認してみるとよいでしょう。
まとめ
一文の長さ「40文字~60文字以内」は、1960年代に心理学者の波多野完治先生がアメリカの文章心理学をもとに日本語に応用させて提唱した文字数。
現代に即した文字数は不明。
ただ簡潔に表現することは現代でも大事。一文の文字数を計測してくれるWebツール「文長さ計測」では自分の文の長さをチェックできる。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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[2022/12/28追記]
本記事は、「2022年よく読まれたnote」 No.3でした!
ありがとうございます!
▼現代に即した文字数について書いた後続記事があります。
▼[2024/10/11追記]
一般的なWebの文章における、読みやすい一文の長さについて記事を公開しました。
ぜひ見ていってください!
2022年3月、私が3年間大学で講義したレジュメをもとに、10代から大人まで幅広く学べるようにまとめた書籍を刊行しました。
\おかげさまで読売新聞に掲載されました!/
【新著】『一生使える Webライティングの教室』(2022/3/23発売)
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