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極上のグルーヴ感 ~アメリカン・ユートピア~<ネタバレ>
ジャック&ベティは、横浜にある老舗の単館系映画館。
横浜シネマリンと並んで、大切にしたいかわいい劇場です。
つい先日も「のさりの島」を観てきたばかりでした。そろそろ会員になってもいいかな。
今回観たのは、デイヴィッド・バーンのライブ映画「アメリカン・ユートピア」。今回も動機は単純で、スタレビの根本要さんがラジオで激推ししていたから。デイヴィッド・バーンが誰かも知らないし(すみません💦)、どんなジャンルの音楽をやるのかもしらないし、要さんがラジオで語っていた「デイヴィッド・バーンが脳みそを持って現れてプレゼンする」「11人のバンドでマーチング的なライブをやる」「すげーかっこいい」「全員裸足」くらいの前情報だけで臨みました。
まず、全体をひとことで表すなら「エレキ版マーチングステージ」
私自身、吹奏楽を長くやっていたので、吹奏楽のマーチングでは、歩きながら隊列を組んで演奏する ということには、さほどの驚きはありません。(私自身は本格的なマーチングをやったことはありませんが)
また、ドラムやパーカッションのマーチングも別段新しいものではなく、かつて映画「ドラムライン」の演奏には度肝を抜かれた記憶があります。(ストーリーは全く覚えていませんが、演奏には衝撃を受けました)
では、このバーンのステージは、何が新しいか。
それは、「エレキ」だということ。これに尽きます。エレキ楽器の技術進歩により、ギター、ベース、キーボード、ボーカルマイク(ヘッドセット)、モニタースピーカー(イヤモニ)、すべてのワイヤレス化が実現し、一切のコード類を排除した。それによって、演者の動きの制約が解かれ、舞台上を自由に動き回ることが可能になり、バンドの演奏+歌+マーチングを融合させたパフォーマンスが実現した。
バンドはバーン+11人。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム&パーカッション、ダンサー2名。特筆すべきは、ドラム&パーカッション。普通のバンドなら、ドラムセット1人、パーカッション1人というところだろうか。それを、ぜんぶバラバラに分解し、ポータブルな形にして抱えて演奏する。バスドラム、ハイハット&スネア、タム、シンバル、コンガ、ボンゴ、タンバリン、カウベル、その他さまざまな楽器を、5~6人で持ち替えながら演奏している。ガチの生演奏だ。なにが凄いって、大勢でリズムセクションを演奏することで生まれるグルーヴ感。これがえげつない。
ドラムセットをひとりで演奏するときには生まれない、複数の人が1パートずつを演奏することでのみ生まれる微妙な「ズレ」が生み出す独特のうねり。これが聴いていてお尻のあたりがムズムズしてくる、踊りだしたくなる衝動に駆られる。
さらに凄いのは、この11人、全員が歌う。演奏しながらコーラスする。バスドラムの、ハイハットの、スネアの、ティンバレスの、コンガの、、、複雑なリズムを叩きながら、踊りながら、歩きながら、歌う。リズムは崩れない、音程も外さない。完璧なコーラス、アカペラもやる。なんだこいつら!
それから、このひとたち全員「裸足」。スーツに裸足。これは、観る前から前情報があったんだけど、なぜ裸足なのか。ずっと考えながら観ていた。そして、私なりの仮説は「靴を履くと足音がするから」
ステージ上を演奏しながら縦横無尽に歩き回る、という演出。ステージの上って、普通にあるいても、思いのほか足音がする。11人が歩き、踊りながら、時には走りまわりながら演奏すると、11人分の足音がノイズとして演奏に混ざる。これを避けるためにバーンは「裸足」という選択をしたのではないか。と思う。
ライブ後半からは、すっかり世界に引き込まれて、実際にはできないけど拍手や声援を送っているつもりになっていた。(実際、声を出している人もいた)映画館で体でリズムを取ってノリノリになったのは、生まれてこのかた初めての体験。
演奏された作品は、わりと思想的なメッセージが強いものが多かったように感じた。バーンの話の中で「投票することの誓約書を書いてもらう活動をした。法的な拘束力などなにもないのに、誓約書を書くだけで投票率が上がった」というのは興味深かった。アメリカでは有権者登録するとか、選挙に行くということについての啓蒙がまだまだ必要ということなのかもしれない。一方、日本は一定の年齢になれば自動的に選挙権が与えられるのに投票に行かない人が多すぎるな~なんて考えていた。(横浜市長選は、誰に入れればいいのかさっぱりわからないが)
まだいくつかの映画館で、上映されているみたい。
買ってきたパンフレットで復習して、もう一度観に行きたい。