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ペン回して外国人と仲良くなった話

筆記用具の類を握ると、今でも癖で回してしまう。

「ペン回し」が流行り始めたのは、中学生の時だった。トレンドとなった主な理由は知らんが、その時水曜9時に放送されていた番組でその手の特集があったとかなんかだったっけか。通ってた学校ではクラスの男子の半分ほどがペン回し専用のペンを所持するようになり、少しの間ブームを築いた。僕は専用ペンを作るまでガチ勢ではなかったものの、授業中ひたすら練習し、ペンを落とし、先生に叱られたものだった。練習の結果様々な技を会得し、今でもその名残で通常技の「ノーマル」と、指と指の間を行ったり来たりさせる「ソニック」と呼ばれる技はできちゃったりする。

しかしながら、ペン回しほど役に立たないものはない。(もしそれで生計を立てている方がいらっしゃったら本当にごめんなさい!)少し頭の体操にはなるかもしれないが、基本的には何も生み出さないものである。人によってはそれが生意気に映るため、印象も良くない。高校の時の英語の教師曰く、クルクル回してるやつは、受験に失敗して予備校通いになるやつらが多いため俗に「浪人回し」だとか言われてたりするらしい。ペン回ししてたら大学受からねぇってのは安直すぎないかい、ホントかねぇ。

しかしそんなくだらん遊びが、引き寄せてくれたものもあった。

アメリカに留学していた時のことである。

学生時代もやはりペン回しの癖が抜けきらない。現地の学校での授業中にシャーペンをクルクル回していたら、隣にいたサウジアラビア人が声をかけてきた。

え?ちょっと待って!どうやったのそれ?もう一回やって!!

非常に驚いた様子だった。

日本では隣の席でペン回ししてようと、「あ、ペン回してらぁ」くらいのもんだが、ペン回しという文化がない、それも中東という特異な文化を持つ人たちからすると、ペン回しはたいそう好奇心をそそるものだったのだろう。昔古代ローマか何かの人たちが戦車(馬の方)を見て驚いたのと似たような感覚だろうか。

授業中だったが、サウジ野郎にもう一度ゆっくりやってみせる。

「うわぁ、すごい!俺はできないよ!!」

海外に出ても根暗で口下手な自分が、少しだけ外国人と仲良くなれた瞬間だった。

その出来事に遭遇した時は、「ハハ、こんなことあるんや、おもろいなぁ」くらいのもんだったけども、今振り返ってみると、なんちゅうか、人生どんな事象が何を引き寄せるか分かりまへんなぁというサンプルにもなってるように思えた。

ペン回しの活躍は、それ以降ない。

久々に、新しい技でも覚えてみっかな。

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