本屋大賞のこと。
『赤と青とエスキース』が2022年の本屋大賞で2位をいただきました。
書店員さんのあたたかな応援を、心からありがたく嬉しく思っています。
本当にありがとうございました。
小説というのは、どうしても作者である私の名前ばかりが表に出てしまうのですが、この作品は今まで以上に、書き上げて本になるまでにたくさんの方々が関わってくださっています。どの出会いがひとつでも欠けたら、あるいはあらゆる出来事のタイミングが少しでもずれていたら、まったく違う本になっていたでしょう。
物語を創作する、書籍という形にするというしごとの不思議さや魅力をあらためて感じています。すべてのめぐりあわせに、ただ感謝しかありません。
また、出版前からプロモーション活動としてさまざまなアイディアを出してくださったり、あちこち駆け回ってご尽力くださったPHP研究所の方々にも深く御礼を申し上げます。皆さんが『赤と青とエスキース』を愛してくださるお気持ちにずっと支えられていました。私は本当に、幸せ者です。
本屋大賞は今年で19回目だそうです。
つまり19年。この歴史の中に、私の作品が参加させていただけたことをとても光栄に思います。
本屋大賞について知れば知るほど、書店員さんが読者さんに本を届けたいという強い想いを感じて、そのありがたさといったら私たち作家にとっては両手を合わせたまま頭を上げることができないぐらいです。
私が作家になって何度も何度も思うのは、「作家は小説を書くことしかできない」ということです。ほんとうに、それだけなのです。
そこから一歩進んで、誰かに読んでいただけること。
書き手と読み手がいて初めて、小説が体温を持ち始めるような気がしています。
私がなかなかお会いすることのかなわない読者さんに、書店員さんが私の本を手渡してくださっているのだと、そのシーンを思い浮かべるたびに胸が熱くなります。「読者さんの手」という、私には一番近いようで一番遠いような、そして私が一番求めている場所へとダイレクトにつながっているのが「書店員さんの手」です。
感謝と敬意を胸に、私は、私の手でできることをしようと思います。キーボードをたたきながら物語をのせていく、まずはそこからこつこつと。
PHP研究所の編集さんたちといただいたお祝いケーキ。
装丁が忠実にプリントされたチョコレートがのっていました。
編集担当、北村淳子さんと。
『赤と青とエスキース』関連のPRには赤を着ると決めていた私に合わせて、いつも青を着てくださっていました。
壁には、この日(本屋大賞発表翌日の4月7日)、私が到着するまでPHP研究所の皆さんが必死にふくらませてくれたバルーンの数々が。
今後の予定として、『赤と青とエスキース』に関連した企画がいくつか進んでいます。ひとつの小説からいろいろな方向に展開していくことも、すごくおもしろいなあと思います。私のちっぽけな頭の中で生み出された世界が、外に出て他の方々のものになっていく。小説という存在の「可能性」のようなものも感じます。
つくづく、私はやっぱり小説を書くことしかできません。
ひとりでかなえられることは何ひとつない。いつもそう思っています。
そしてそれはとても素晴らしいことなのだと、今、一緒にいいものを創ろうとする仲間や、力を与えてくださるたくさんの方々の中にいて実感しています。
これからも私なりのペースで、大切なものを見失わないようにひとつずつ取り組んでいこうと思います。
今できることを、今ていねいに。
本当にありがとうございました。