左ハンドル車は優位?UX視点で運転席を考察
日本は左側通行で右ハンドルの国である。同様な国が、イギリス・インド・オーストラリアなどが上げられるが世界的にみると少数である。
どっちでも特に変わらないだろうと思うが、運転する人間からすると若干違いが出てくるのだ。UXデザイナーであり、レースもたまに参加するほどの車馬鹿である私にとっては、色々とその「ハンドルの位置の違い」が気になるのだ。知らない人には、そんな違いがあるのか、と思うはず。
なお、ここでは日本での左ハンドル車を推奨する話ではなく、単純にハンドルの位置の話です!
タッチパネル化されるインフォテイメントシステム
昨今の自動車は、ナビゲーションやラジオ等エンターテイメントと情報表示システムとが融合されていて、インフォメーション(情報)とエンターテインメント(娯楽)の語を組み合わせた造語である「インフォテイメントシステム」と業界では呼ばれている。このインフォテインメントシステムや計器などがどんどんタッチパッド+大型画面化されているのは御存じだろうか。
かつての自動車は、ボタンやスイッチなどが主流のインターフェースだったが、いまや我々の生活の必需品になったスマートフォンと同じ触覚インターフェースになってきている。
ここで右ハンドルの運転席に座っている事を想像してほしい。ナビゲーション、エアコン、カーオーディオを操作するシステムは中央に大きなタッチパネルとして鎮座している。エアコンの温度変えたいな、と思ったらどっちの手が動くだろうか。
エアコン操作のアイコンをボタン押して、温度を下げるボタンを数回押す、そんな動作を行うときに、右ハンドルの場合は、左手の指で行うのが自然だ。ここで、右利きの人がどう思うか。「使い難いなぁ」と思うか、それとも「別にどっちでも同じ」だろうか。
下記の写真は左ハンドルで中央に 11インチのインフォテイメントシステムが鎮座している車だが、右利きならこっちのほうが楽なのではと思う。
タッチするぐらいならどっちの手でも慣れれば大丈夫、という人のためにもう一つお題を。これらの中央にシステムをコントロールするタッチパッドがついてる車があり、ナビなどの地域入力や検索時の文字入力をタッチパッドの手書きで行える車種も存在する(下記写真参考)。
手書きとなるともはや普段、文字を書く手じゃないと難しいはず。左手で文字を書く人には楽だろうし、右利きは体を強引にひねって入力する事になる。
足下スペースの余裕
ATなどの2ペダル(アクセルとブレーキ)車が昨今は多いのであまり気になる事はなくなったが、運転席の足下のスペースも右ハンドル車と左ハンドル車では異なる。
右ハンドル車の右足のそばには基本的に右前輪がそばにありタイヤハウス(ホイールハウス)が車内に入り込むため、アクセルペダル側に余裕が少なく左側(車のセンター側)に寄りがち。一方で、左ハンドル車の場合は、左前輪は左足になるが基本的に左端はフットレストなどになり、右ハンドル車に比べると足下は若干余裕ができる。
下記の「左ハンドルメリット」のサイトには図解で紹介しているのでご参考までに。
なお、2ペダルのAT車(PDK, DSC含む) ではあまり影響ない話しかとは思うが、スポーツカーでマニュアルミッション(MT, 3ペダル)で運転する場合には、ペダルレイアウトは非常に運転フィールにも影響する。ポルシェ 911 などに乗る人は、左ハンドルじゃないと気持ち悪い、という人もいうぐらいである(昨今は、右ハンドルでもペダルレイアウトは大分改善されて問題なくなったらしいと聞いている)。
IT時代になって...
左側通行においての右ハンドルと左ハンドルの話はともかく、単純に通行ルール考えないならどっちも同じと思えても、実は上記のように若干違いがある。
これは、人間が利き腕があること、そして、車の操作が右足がアクセル(確定)という偏向型インターフェースであるから生まれている事象と考えている。
しかし、時代はIT化が進み、AIの技術をつかったUIやシステムが車にも搭載されてきている。上記のタッチパッドの問題も、音声UI (Voice UI) が搭載されているならば声で操作すれば楽。
「エアコン 25度に」「次の曲かけて」
これなら運転中でも大丈夫だ。
しかし音声UI (Voice UI) や 音声UXデザインを長年専門としている私からすると、まだまだ車の音声UIは不完全で使い勝手は悪い。体験デザイン(UX)ができていないからか、実際に音声UIを搭載する車のオーナーですら、結局、ボタンを押したほうが早いので、音声など使わないらしい。音声UIについては、他にも色々な課題があるがそれはまた別の機会に。
ともあれ大昔に車をデザインしていた人が、こんなことまで考えてハンドルをどっちにつけようかなど考えても見なかった事だろう。今後、完全自動運転ができるようになると、私が書いたハンドル問題も懸念点も杞憂に終るはずだ。
とはいってもまだ全自動運転時代には時間がかかりそうだし、私のように「運転する歓び」を車の価値の一つとしている人間にとっては、車のインターフェースに一喜一憂してしまうのである…