見出し画像

探索

 「こちらAである。ただいま衛星軌道内に突入し帰路に着く。」
長い宇宙の探索を終え、目的地である惑星に向け着陸の通信を試みた。
宇宙での探索は、多くの資源や、惑星の発見があり、その資源や情報をこの惑星に届けるのがAに与えられた仕事なのである。
 自動操縦に切り替え、Aは今までを振り返った。
 Aの人生における楽しみは、宇宙船に送られてくる映像をみてストーリーを楽しむことである。
Aは1日の仕事終え、食事と飲み物を手に船内のリビングフロアで映画を見るのであった。
 見た事のない格好と、顔立ちをした生物達の生き様や、私生活を見る事は新しい発見があり、最高の娯楽であった。たまに、宇宙を舞台にした映画を見るのだが、これは事実とはかけ離れており、Aは宇宙を舞台にした映画を見るのはあまり好きではなかった。
ピーと通信機が鳴った。
「こちら地球である。長期配達ご苦労である。着陸後は盛大なパレードを準備してあるので楽しみにしてくれたまえ。」
パレードは何回か映像でみたことがあり、非常に興味を持っていた為Aはワクワクしていた。
 大気圏に突入し、Aの乗る宇宙船は無事に目的地に到着した。
ハッチを開けると、映像で観た生き物達が集まっていた。
しかし、その生物達はAを見るなり後退りし、どよめき、一定の距離をとった。

「一体何者だ。Aではないな?」
と、黒い服に身を纏った代表者らしき者が質問を投げかけた。

「私は、Aですよ。正確に言えば、あなた方の言っているAは私の何世代も前の先祖になりますがね。」とAは何本もある触腕と、緑色の瞳をぎょろぎょろと動かし見渡した。

「しかし、宇宙空間では我々人類の時間よりのんびりと時が過ぎるのでは?」
カメラを首からかけた若者はそう投げかけた。

「この近辺の宇宙ならね。宇宙空間にはいくつかの時間が存在するのです。
私たちはあなた方よりも急速にその空間では一生を終えるのですよ。そしてあなた方は先祖のAに嘘を吹き込み、旅立たせた。この恨みを私が今ここで晴らします。」

そういうと、Aは手から小さなタネを地面に撒いた。
タネは急激に成長し、人々から養分を吸収し星を丸呑みにした。

「さて、この星で余生をゆっくりと過ごそう。前より幾分かのんびりと過ごすことができるだろう。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?