優しさ
朝の空気は冷たくて澄んでいる。
ずっと触れていたい。
優しい人に優しいと言われた。
私のこれは優しさと呼ぶのかどうなのか。
曖昧な返事すらできず愛想笑いで乗り切った。
私は幼い頃から礼儀と常識だけを大切にして生きてきた。ありがとうとごめんなさいを惜しみなく発する。しかし使いすぎては言葉が薄れてしまう。日本語が持つ美しさは保ちつつ、感謝と謝罪を口にする必要があると思う。
なんて口にするのは簡単。
どんなに理不尽で、腹立たしいことがあっても決して怒らず寛大な心で受け止める。波の立たぬよう
平凡ながらに平和な日常が続くよう振る舞う。
果たしてそんな私は「優しい」のだろうか。
「逃げ」ではないのか。
その境界線はまだ16の私には分からない。
私を優しいと言ってくれたあの優しい人はどう生きているのだろう。
朝の空気に触れていると、普段考えもしない事が
つらつらと頭の中で書き出されていく。
嗚呼、ずっとこの空気に触れていたい。