神様時計
「ちょっと聞いてくれよ」
いつも面倒臭い白川くんが、いつも以上に高いテンションで絡んでくる。
「この前、東京バンズ横の路地で神様に会ったんだよ」
既に嫌な予感しかしないが、とりあえず聞いてみる。
「神様ってどんな格好してんだ?」
「髪も髭もボウボウで、ボロボロの服着て、浮浪者みたいな格好だな。
あ、でも杖持ってたから、あれは神様だよ」
「それ、浮浪者だろ」
こいつは何をもって神様と認識してんだ。
「話はここからだ。驚くなよ、神様から時計を買ったんだ。
寿命を削った分だけ、神様から時間をプレゼントされるんだぞ」
「それ、詐欺だろ。よく考えてみろよ。
白川くんが後5日しか生きれないとして、寿命を1日削ると後4日だろ。
そこに1日プレゼントされても5日で、差し引きゼロじゃないか」
白川くんは、そうだな、って元気に言う。
「いくらで買ったんだ?」
「銀行に入っているお金全部さ」
自慢げに言う白川くんに、お前の将来もその神様だな、と心の中で思った。
#毎週ショートショートnote
※たらはかにさんの『毎週ショートショートnote』参加作品
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