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カフェをとりまく人々 #4 貴子さんとまちづくり
2006〜2022年、私はカフェオーナー兼、料理人だった。
そこで出会った、興味深く愛すべき人々のことを、少しずつ思い出しながら綴っていこうと思う。
#4 貴子さんとまちづくり
貴子さんと初めて会ったのは、島根県温泉津町のカフェバー路庵ではなかったか。
いろんな繋がりで、知っていた、やっと会えた。
女性経営者の先輩として相談に乗ってくれて、カフェの改装を勧めてくれたのも貴子さんだ。当時私は20代半ば、貴子さんは30歳くらい。
貴子さんは特殊な能力を持っている。
目の前にいるその人の、その場所の、その町の、魅力をすべて照らし出す能力。
そんな人に出会ったことがなかった。
貴子さんに出会った人や場所は幸運。
すべての魅力を照らし出して、最高に輝く道を示してくれる。
太陽か?神なの?
それが、すごく普通の、自然体の人である。
初めて貴子さんの自宅を訪れたのは、2006年だったかしら。
古民家を改装した、小さな二階建て。
入って正面にはオレンジ色のタイルが一面に貼られたカウンター。
トルコのランプ、色とりどりのバブーシュ、つやつや光る焦茶色の古民家の木材。
キッチンはとても小さく、そこに形のいろいろな大皿や、珍しい調味料が並び、天井から吊るされたカゴには食材やスパイスがギッシリ。
キッチン自体がギッシリ。
それはもう、何かのヨーロッパの物語で出てくる、ちょっと魔女めいたおばあちゃんの出てきそうな場所であった。
この人が作るものは絶対おいしいと確信した。
その頃に「江津本町ふらり」が誕生した。貴子さんの自宅で、会議したことを記憶している。町おこしのイベントで、それから十何年も続くことになるお祭りである。
町自体が、魅力を持っているんだということを、歩きながら体感できる。
貴子さんはそこから本当に、江津の人たちの、建物の、町自体の魅力をどんどん発展させていった。
十何年もかけて、いろんな人の、場所の、個性を照らし出しまくっているのだ。現在その活動は江津市西側の都野津(つのづ)から、東側の温泉津(ゆのつ)まで広がってきている。
止まったら死ぬ回遊魚か?という行動力も、広い知識と視野も、尋常じゃない美的感覚も、すべて惜しみなく費やして、まちづくりに活かしている。
やっぱり普通じゃない。
貴子さんの運営する「NPO法人てごねっと石見」
女性経営者の気軽な集まり「電卓の会」で、一緒に楽しい旅をした仲間でもある。
どんなに大きな影響を持っていても、貴子さんにも悩みはある。
そういう、人間らしさが良いんだと思う。虚勢なんてない、悩みながら一生懸命やってる人。
根底にバカでかい愛がある。人が好き、町が好き。
話をして、相手のここが素敵だと思える、謙虚な愛。
そんなわけで、カフェ・ミシェルも私も、貴子さんにめちゃくちゃ照らしてもらった。ピカピカ光った。
ありがとう、出会えて幸運。
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提案してくれたのも貴子さんだった
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持ってきてくれた青タイルを配した入り口正面の棚。
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