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282.夜はディナータイムだ。洋猫なので、ビーフを食す。魚ではない。牛だ。牛を食う猫なのだ。「にゃー!」猫缶だが、少し温めてから出す。冷たいままだと食べない。なんて贅沢なニャンコだ。彼女が満足そうに食べるのを見ながら、男は袋ラーメンを茹でる。エンゲル係数的には、彼女の方が高い。
281.夕方になると、猫を抱いて、ネットの動画を眺める。猫動画も観るが、彼女はあまり反応しない。他の猫にあまり興味がないのだ。興味があるのは人間だけで、自分の事を、猫だと思っていないかもしれない。時々、何かに嫌がる反応とか、人間の女性と全く同じリアクションをする。とても可笑しい。
280.論文が書けなくなったので、André Gideの『La Porte étroite』を開いて読む。彼女も近づいて本を覗き込む。そして振り向く。アリサとジェロームのお話より、私を見てよ。ダメだ。可愛すぎる。マドモアゼルの誘惑に負けて、彼女を愛してしまう。こうして日は暮れる。
279.彼女は目を覚ました。あくびをする。机から降りる。見上げながら、おもちゃを所望する。運動の時間だ。部屋中を駆け回る。大運動会だ。でもすぐに終わる。彼女は熱しやすく冷めやすい。だが論文の邪魔をする。私を見てと、ドーンと胴体で視界とノートを遮る。男は諦めてコーヒーブレイクした。
278.彼女は眠っている。男は『形而上学』Z巻を開き、机の片隅で丸くなっている彼女に触れながら、ノートに古典ギリシャ語を写経する。リッデル&スコットのレキシコンも横にある。一説よると、猫とは寝る子、寝るという言葉に由来する。言葉の全ては動詞が先か名詞が先か。彼女は未だ眠っている。