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[書評] 異世界の歩き方
『地球の歩き方 ムー 異世界(パラレルワールド)の歩き方—超古代文明 オーパーツ 聖地 UFO UMA』Kindle版(地球の歩き方、2022)
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超古代文明の遺跡を訪ねたい人は必携
いままで断片的な情報しかなかったものが、こうして一堂に会するさまを見ると、圧巻である。「地球の歩き方 」と「ムー」(ともに1979年創刊)とが共同編集した世界の不思議スポットの紹介書。
「ムー」的な場所を訪れたいと思ったとき、手軽に旅行情報を調べることは、意外にむずかしい。通常の観光地ではないので。
本書があれば、大まかな旅行情報が得られるので、あとはそれをもとに一般的な旅行ガイドで調べれば何とか現地に行きつけそうな気がしてくる。
以下、極私的に関心のある箇所について(本書は「地球の歩き方」らしく、興味のあるところを読むのが最適なように設計されていると思う)。
◾️ ギョベクリ・テペ
・行き方……シャンルウルファから車で25分
(トルコの首都アンカラからシャンルウルファまでの行き方は自分で調べる)
今から1万1600年から1万200年前に造られた世界最古の神殿。推定10トンのT字型石柱が有名。
多くの人員を組織し、高度な社会事業をおこなっていたが、今から1万年前以前に突然に神殿群はその役割を終えている。その原因は不明。これほどの技術が近隣の地には継承されきっていないという。
この地には、後に家畜化される多くの動物の野生種(牛、羊、猪など)がいた。さらに、ここから40kmのところ(ネヴァル・チョリ遺跡)では世界最古の栽培された麦が発見されている。
つまり、ギョベクリ・テペは、「狩猟採集社会の最終段階、農耕、牧畜が誕生する直前に築かれた遺跡」である(87頁)。
エジプトで最初のピラミッドが造られたのが今から約4650年前。つまり、エジプトと現代のほうが、エジプトとギョベクリ・テペより、時間的に近い。
突然出現し、突然終わった人類最古級の遺跡。ユネスコの世界文化遺産に登録されているが、いったいこれは、どういう存在が担った文化なのか。その存在はどこから来て、どこへ行ったのか。
ギョベクリ・テペを舞台にしたドラマ・シリーズ 'Atiye / The Gift'(Netflix, 2019-21)がある。
◾️ シュメール
・行き方……〈2022年1月現在、イラク南部は外務省により危険レベル3、渡航中止勧告が発出されている。現状での旅行は現実的でない〉と記されており、執筆時点(2022年10月)も同様なので、旅行は現実的でない。
〈人類最古の都市文明〉と書いてある。ただし、年代は紀元前3300年から前2000年頃なので、ギョベクリ・テペの8000年から1万年あとの文明ということになる。だから、本当は〈人類最古の〉という言葉は、シュメールに使えるのかどうか。ただ、シュメールは文明的にいろいろと興味深い点がある。
一般には、〈文字、車輪、ろくろ、法律、60進法〉はすべてシュメール文明を起源とすることが指摘される。だが、評者が最も興味を惹かれるのは、〈史上最初に1週間を用いたのはシュメール人〉という事実のほうだ。〈太陰暦を用いていた彼らは、1カ月を4等分し、7日ごとに月を祀っていた〉という。
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本書は、「地球の歩き方 」と「ムー」のコラボ編集という特徴が随所に見られる。多くの項目で、両者の角度からのアプローチが見られる。
「シュメール」もそんな項目で、上のような記述のあとに、「ムー」サイドの記述がある。
「ムー」読者の予想通り(?)に、シュメールのアヌンナキ伝説が書いてある。このあたりは、通常の旅行書には絶対に出てこない記述だ。
その方面の読者にはよく知られた、ゼカリア・シッチンの説が展開されている。シッチンはシュメールの粘土板の解読により、45万年前にニビル星(火星と木星の間の未知の惑星)から地球にアヌンナキたちが到来し、地球の金の鉱脈の採掘を始めたと判ったという。
アヌンナキによる地球支配は長く続き、紀元前3800年に、隷属民だった地球人類に文明を授ける決断をして誕生したのがシュメール文明だと、シッチンは主張する。
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惜しむらくは、こうした「ムー」的記述が、「ギョベクリ・テペ」の項にはないことだ。まだ、シッチンのような研究者の研究があまり及んでいないのかもしれない。
◾️ ニューグレーンジ
・行き方……アイルランドのダブリンからツアーが出ている。ドロヘダからのバスもある。
評者はここには2回行ったことがある。冬至の日の出の光が真っすぐ墓室に届くように設計された巨大墳墓だ。年代は5000年以上前で、新石器時代以前のものとされるが、天文学の知識があり、高度な文化を持っていたと考えられる。イギリスの有名なストーンヘンジより古い。
しかし、どんな民族が作ったかは不明。
入口の渦巻き模様の巨石は有名だが、何を意味するかはこれも不明。
神話的には、ここは異界(のダナン神族のところ)への入口とされている。
近くにあるダウスの古墳は、冬至の日の入りの光が通路を通って玄室に届くように設計されているそうだ。
本書は、世界の高緯度の場所では冬至を神聖視し、低緯度なら春分、秋分の日に合わせた建築の数が多いと述べる。
このように、本書は、世界の同様の場所について展望を与えてくれる点が、他では得難い魅力だ。個々の文章を誰が書いたかは分らないが、手抜きは一切なく、どれも中身が濃い。巻末には索引まで付いている。