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[書評] HEART NAVI

横河サラ『ハート・ナビ』(ビオ・マガジン、2021)

まず、最初に驚くのは、題にある〈ハート〉の意味だ。おそらく、本書を手にする人の殆どが、〈こころ〉の意味に取るだろう。

だが、違うのだ。本書では文字通り〈心臓〉の意なのだ。

だとすると、題名から受ける感じがまったく変わってくる。副題に〈人生の万能薬〉などと書いてあるものだから、〈生きるヒント〉が書かれた、よくある類の本かと先入観を持った人は、あまりの違いに愕然とすることになる。

でも、〈心臓のナビ〉ってどういうこと? おそらく、そこで医学の専門家以外は思考停止してしまうことだろう。

だが、本書は医学書でもないのだ。エソテリクな意味での心臓へのアプローチの方法を書いた本なのだ。

ここまで来て、ああそうかと、ドリール博士の読者なら、そういうことかとピンと来るところだろうが、それはかなり珍しい人の場合だ。ふつうはどう考えてよいか、途方にくれる。

神秘学の方面の伝統では、いろいろなグールーたちが、心臓のことを述べている。本書の場合は、著者がドランヴァロ・メルキゼデク(Drunvalo Melchizedek)から教わった内容がベースになっている。

そうやって、いったんリセットしてから、改めて本書を読んでみると、谷川の水が砂にしみこむように、読む人の中に内容が入ってくる。豊かな世界がそこには広がっているのだ。

164ページの中に、言葉少なにポツポツと語られる内容と、付録のCDとを合わせても、読了にはほとんど時間がかからない。すぐに読めてしまう。だが、その読後感はいつまでも尾を引く。

これはあるいは著者の本の特徴かもしれない。『ホワイトハット全解剖』の場合もそうだった。読み終わってからの時間のほうがむしろ充実している。目に見えないところで深い影響を与える本なのだ。

これはと思うところを一つだけ挙げておこう。

【キリスト意識のグリッド】
(1万3000年前のアトランティスでの)大事故によって、この星をとり巻いていたキリスト意識のグリッドが壊れ、次元間の膜に穴が空いてしまいました。(16頁)

著者によると、このときのショックで人々の意識がハートから出てしまい、脳に入ったのだという。本書はしたがって、それをハートに戻すために書かれている。

本書の第1章はこのように始まる。語り口はやさしく、あくまで穏やかだが、書いてある内容は重い。しかも、レベルは相当に高度なことをさらっと書いている。だから、文体は軽く感じられながらも、印象に残る。

この〈キリスト意識のグリッド〉(Christ consciousness grid)については、例えば、ドランヴァロ・メルキゼデクの『フラワー・オブ・ライフ』(The Ancient Secret of the Flower of Life)を参照する必要があるだろう。だが、そんなことには本書は一言も触れない。そんな難しいことはさておいて、目の前のあなたに向けて、ではどうすればよいかを淡々と丁寧に説いてゆくのだ。その点では、非常に分りやすく、親しみがもてる。

やさしい本だけど、深い本だ。

#横河サラ #心臓

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