英詩の基礎知識(8)
※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。
※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(201610)」へどうぞ。
この継続課金マガジンは月に本配信を3回配信します。そのほかに副配信を随時配信します。本配信はだいたい〈英詩の基礎知識〉〈英語で書かれた詩〉〈歌われる英詩〉の三つで構成します。「忙しい現代人ほど詩的エッセンスの吸収法を知っていることがプラスに! 毎回、英詩の実践的な読みのコツを紹介します」というキャッチフレーズでやっています。
これまでに扱った基礎知識のトピックについては「英詩の基礎知識 バックナンバー」(「英詩の基礎知識(6)」に収録)をご覧ください。さて……
今回は「英詩のアクロバット」をやります。
前回が「構文アクロバット」だったので、似ているとお思いの方もおられるでしょう。アクロバットは実は構文でのみ起きるとは限らないのです。一見して、簡単な、だれが見ても誤解しようがないような構文の詩でも、アクロバットがあり得るのです。今回はそういう例をとりあげて読み方を考えます。
アメリカの女性詩人Nayyirah Waheedの1行の詩を見てみます。
彼女の'remember'という詩は「[英詩]名句選(1)」でも取上げました。
***
are your eyes blushing?
これだけです。いかがですか。
Waheed の詩集'salt.'に収められている詩です。
こんなもの、詩とは思えないという方もおられるでしょう。
でも、これはりっぱな詩です。私はそのことに気づくまでに、かなり時間がかかりました。ぱっと見て、その意味に到達できるかといえば、詩の場合、一般論として、繰返し読み、ある程度時間をかけて自分の内部で発酵させないと、なかなか分かりません。
なぜ時間がかかるのでしょうか。いろんなケースがあると思いますが、基本は詩人がそれだけ時間をかけてつくっているからでしょう。ある詩想なりリズムなりを思い浮かべ、それをころがしているうちに、最終的にこの調べでいこうとなったものが発表されていると思います。そこで、読む側は、その過程を多少なりとも追体験し、時間をかけて解凍してやる必要があります。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?