泣き笑いの比率
チャプリンもそれを知っていたとは。
でも、考えてみれば当然かもしれない。チャプリンほどの天才だもの。
チャップリンは、観客が「大笑いして少し泣く」、もしくは「大泣きして少し笑う」ような映画を創ろうと努めていた。中心となる感情が作品を圧倒して飽きてしまうことがないように、全体的な感情のバランスを的確にとっていたのだ。(ボグラー)
出典:クリストファー・ボグラー (著), デイビッド・マッケナ (著), 府川由美恵 (翻訳)『物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術』(アスキー・メディアワークス 、2013)
David McKenna & Christopher Vogler, 'Memo from the Story Department: Secrets of Structure and Character' (Michael Wiese Film Productions, 2011)
この本の興味深い点はキャンベルの神話理論とプロップの物語(フォークロア)理論とを組合せたところだ。つまり、『指輪物語』のようなヒーロー物語の原型と妖精譚の基本形を組合せたようなもの。そりゃ、ヒット作が生まれるわけだ(ボグラーはディズニーの「美女と野獣」「ライオン・キング」のストーリー開発に携わったという)。
こういうふうに昔からある神話や民話の原型という基礎をふまえれば、チャプリンの泣き笑いの混ぜ方の秘密も分かるというわけだ。
それで思い出すのが、又吉直樹の小説処女作『火花』。あれにも泣き笑いが絶妙なバランスで混ぜ合わされている。ぼくはあの小説に「笑いの神話化」の構造を読取ったのだけど、民話的要素もあるとは知らなかった。
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