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ツングースカ大爆発とディアトロフ事件

あすか あきお『ツングースカ大爆発の謎とエイリアンUFO』(「ムー」2月号付録、2022)

あすか あきお『ツングースカ大爆発の謎とエイリアンUFO』

46ページの短い漫画。が、膨大な情報と知識の網の目を凝縮してある。1908年におきた謎のツングースカ大爆発について、おそらく初めて出された仮説。

仮説を要約すると、1908年6月30日7時2分頃にシベリアのツングースカ川上空でおきた大爆発の原因について、隕石の落下とする従来の説とは違い、ニコラ・テスラの実験の影響でおきた電離層の乱れにより、アルザルの母船が墜落したというもの。

おそらく、トンデモ説として扱われると思われる。2013年に提唱された隕石衝突説が確定したとされる現在では。

2013年の「定説」についてはいくらでも調べられるが、飛鳥昭雄説はこの漫画でしか読めない。

飛鳥説の特徴は、テスラとアルザルという興味深い要素以外に、もうひとつの謎である、1959年のディアトロフ峠事件 (雪山登山の男女9人がテントで異常な遭難死をした事件) と結びつけたことだ。

この事件が起こった峠はウラル山脈の北部にあるが、峠から10kmの山は1908年に墜落した母船が2回目のバウンドで着地したところで、今もそこに母船があるという。その山 (ホラート・シャフイル山) は頻繁にプラズマ現象が起きる「死の山」であると本書は述べる (「ホラート・シャフイル」はシベリアの少数民族マンシ人の言語で「死の山」の意)。

漫画の読者としてここからできることは2つの方向がある。ひとつは、2013年の隕石衝突説を検討してその当否を判断し、その上で飛鳥説を考えることだ。もうひとつは、ひたすら飛鳥説の興味深さを眺めることだ。私としては後者のほうがおもしろいと判断する。理由は、2013年の説の物的根拠 (地球上にない鉱物等) の量があまりに少ないことだ。

ディアトロフ峠の話が本当だとすれば、ロシアは自国の真ん中に「爆弾」をかかえていることになる。北側のノヴァヤゼムリャ (カラ島) 核実験場と、南側のバイコヌール宇宙基地とが、この死の山を「監視」しているという本書の説もあながち外れているとも思えない。

#書評 #ツングースカ #隕石

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