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[書評]『ドラゴン・ヴォランの部屋』

アイルランドの作家シェリダン・レ・ファニュ(1814-73)の日本における作品集の第2弾。第1弾『吸血鬼カーミラ』(平井呈一訳、1970)から47年経っている。

短編4本、中編1本が収められている。この作品集に対する評価は読む人の立場によって変わるだろう。怪奇幻想小説を求めて読むと満足度はおそらく低い。超自然要素を含むポーばりのサスペンス小説をアイルランドとイングランドを舞台に展開した文学と考えればおそらく高評価になる。ジェーン・オースティンとの影響の相互関係がある作家という角度で読めば、それなりに興味深い。どの立場から読むにせよ、レ・ファニュの語り口はリーダブルで、親しみやすい。ただ、アイルランドに関心がある人が読むと、アイルランドの物語とは思えない固有名詞の表記で興ざめする点は多々ある。

純然たる小説のおもしろさという観点からいうと、表題作が群を抜いている。ミステリの要素をふくんだ恋愛小説に、生きながらの埋葬という恐怖と、得体の知れないシナ人占いとを加えた、一種独特の味わいがある。200ページ近くあるけれど、フランスを舞台にした波瀾に富んだ展開で飽きさせず、短い章を連ねた読みやすい作品だ。

イングランド北部を舞台にアイルランドの妖精譚のような人さらいの物語を綴る「ローラ・シルヴァー・ベル」もおもしろい。イングランドでもアイルランドの民間伝承と同様の伝承があったのだとすれば、大変興味深い。

J・S・レ・ファニュ『ドラゴン・ヴォランの部屋』(創元推理文庫、2017)

#レファニュ #アイルランド #センセーションノヴェル #妖精譚 #幻想小説  

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