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血液学的な検査

今回取り上げるのは「血液学的な検査」の分野です。臨書検査の分野の中でも化学分析や免疫学的な検査と聞けばピンとくるかもしれませんが、血液学的な検査ってどんな内容なのでしょうか。じつは、血液そのものについて調べる検査の分野が血液学的な検査ということになります。血球について調べる分野と、血漿の状態で固まり易さなどについて調べるというものですね。

血液の成分は血球の部分と血漿の部分に分けることができます。血球の方は大きく分けて3種類、赤血球、白血球、血小板の3つで、まとめて「血球成分」と呼ぶことがあります。この呼び方で普通に分かるのですが、厳密に言うと血小板は血球ではありません。キチンとした表現をするなら赤血球や白血球も含めて「有形成分」と呼ぶことになります。

血漿の方は扱い方にちょっと問題があります。以前に書いた化学分析の時や免疫学的な検査の時には血清を用いるのが一般的といった意味のことを書いています。血漿と血清ではどこが違うのか、気になりますよね。

血液は体の外に出ると固まるのはご存じですよね。その時の状態は背景の液体が血漿で、そこに血球成分が浮かんでいる状態です。これが体外に出てしまうとそれまで溶け込んでいた凝固因子が活性化して、血球成分を絡め捕りながら固まってしまうのですが、採血をしたときに何もしないでおくと固まってしまいます。こうなると血清しか採取することが出来ません。そのために、血液が固まらないようにするための別の処理が必要です。

血液学的な検査という場合、大きく2つの分野に分けることができます。血球成分について調べる分野と、凝固因子などについて調べる分野なのですが、どちらも血液が固まってしまうと調べることが出来ません。そのため、採血をする場合に血液を入れる試験管のような容器に、あらかじめ抗凝固剤と呼ばれる薬品を入れたものを使用します。そして、採血した血液を入れるとすぐに転倒混和して血液とその薬剤を混ぜて血液が固まらないようにするという処理をする必要があります。

血球成分を調べたり、凝固因子などを調べたりする前に血液が固まってしまったら、調べることが出来ませんのでこのような処理をするのですが、採血をされる側の患者さんから見れば「なぜいろいろな種類の試験管が必要なのか、そもそも1本じゃだめなのか?」といった疑問が出るのも無理ありません。ただ、測定したい項目ごとに用いる血液の成分が異なるため、それに応じた最適な処理をしたうえで分析をするので、複数の試験管のような容器が必要になるわけです。

それはさておき、血液学的な検査の中身の方ですね。まず、血球成分に関わるものとして、その数が大事な検査項目になります。例えば赤血球の数が少ないと貧血になっていないかという懸念が出て来ますので、さらに詳しく調べてみようという事になるでしょう。血小板の方も数が少ないと血液が固まりにくくなることがありますので、その判断をするためにも必要です。白血球にしても一定の数よりも多ければ、なぜ数が多いのか、体のどこかで炎症が起きていないかといったことをさらに調べる必要が出て来ます。

これに加えて、血液成分の標本を作って顕微鏡で観察するという検査もあります。主に白血球を観察することになるのですが、その白血球は複数の種類のものから成ります。したがって、それらの数の比率を調べることも行います。赤血球と白血球でははるかに赤血球の方が多いので、どうしても赤血球が目に入ってきますが、その大きさにバラつきがあるなと感じた場合は、それについても観察の対象になってきます。そんなことについても調べたうえでの報告となるわけです。

もう一つの分野である凝固検査の方はというと、血液がキチンと凝固するか、固まるかという事を調べる検査です。ですから、調べる前に固まってしまっていては検査できないことになるのはお判りいただけると思います。それはともかく、凝固因子は10種類以上の成分があって、それらが順に反応していって最後に血液が固まって血餅と呼ばれる凝固塊になります。この反応の中のどの因子が欠けても、反応は最後まで進まず途中でストップしてしまいます。ですから、どの因子の影響で凝固がストップしてしまうのかを調べるといったことも行うわけです。

この場合の検体は血漿という事になりますね。固まった後の上清だと血清ですから、これでは凝固因子が含まれていませんので、検体にはできません。いろいろと制約がある中で、検査しているのです。

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