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サイトカインと感染症

今回は、サイトカインと感染症の関係やそれにまつわる話題などについて紹介します。感染症との関わりについて考えるとなると、生体(人間)側の免疫反応や炎症反応などについても取り上げる必要があると思いますが、いくつかの話題についてはすでに紹介しているところもあったようです。その辺りの再掲も含めて調べていくことにします。
 
まず、サイトカインは細胞間の情報伝達物質でたんぱく質でできています。いろいろな細胞から分泌されますが、作る場所が細胞ですから大きなサイズのものではなさそうですね。役割として細胞間のコミュニケーションが挙げられますが、直接病原体に働きかけて排除する働きを持つものもあります。免疫を担当する細胞の間でコミュニケーションを取りつつ、免疫反応を強めたり弱めたりする場合もあるようです。生体の中で起きていることですから効果的に働いて欲しいものですね。そのためにも、自然免疫を担当する細胞とリンパ球のように抗体の産生に関わる細胞との間でも密な情報交換が必要ですが、そういったことを担当するのもサイトカインの重要な役割です。

先に少し触れた「病原体に直接働きかけて攻撃するサイトカイン」として、炎症に関係するものを挙げることができます。ただ、炎症に関わるサイトカインは「炎症政界とカイン」と「抗炎症性サイトカイン」の2つのグループがあって、両者のバランスが取れている状態を保つことで身体を守っているのですが、このバランスが崩れると困ったことになります。

そういったことも踏まえての感染症との関係になるのですが、こんな役割を担ってサイトカインが感染症と関わっています。

まず、何らかの病原体に感染したことを察知すると、免疫に関わる細胞に連絡してこれらを活性化させる必要があります。そういったコミュニケーションの部分をサイトカインが担当しています。最初の段階で関わるのはマクロファージという免疫細胞ですね。このマクロファージってどんな細胞かというと、体内に入ってきた病原体、それから死んだ細胞なんかを取り込んで消化してしまう「食細胞」なんです。生まれついて持っている生体の防御機構のひとつで、最初から存在する機能なので「自然免疫」と呼ばれているものです。全身のあちこちにいて常に見張っている感じでしょうか。直接食ってしまうなんて、サメみたいなやつですね、人間の側からすれば「良い奴」なんですが。

そのマクロファージは仲間にそれを知らせるために、サイトカインを分泌してコミュニケーションを図ります。他の免疫細胞に動員をかけるというのでしょうか、呼び寄せたり活性化させたりして、本格的に防御反応の態勢を築いていきます。

サイトカインの方はと言うと、免疫以外のところにも働かなくてはなりません。今度は生体の側の免疫細胞以外の組織の所にも働きかけます。炎症反応を引き起こすわけですね。炎症には定義があって、発赤、疼痛、発熱、腫脹の特徴があります。炎症を起こした場所は赤く腫れあがって、痛いし熱を持っている状態になる、そういった反応のことをちょっと難しく表現したものです。機能不全を加える場合もありますが、一般には先に挙げた4つの特徴を知っていればよいでしょう。

炎症反応を起こすことでその場所にいる病原体の増殖を抑えたり、その部分の修繕(修復)に取り掛かったりしやすくするのですね。

ただ、これだけでは感染症の解決にはなりません。一応の治癒ができたとしても、人間ならこんなようなセリフを吐くことがありませんか、「今度来たら承知しないぞ」って。これも身を守る術ですから仕方が無い事なのですが、じつは免疫反応もこれと同じような事をします。一度感染した病原体に対して次からは感染してもすぐに対応できるようにするために「獲得免疫」という反応の体制を作り上げておきます。最初に感染した時は大わらわで対応策を作って撃退するのですが、その時の抗体の作り方を残しておいて次の同じ病原体の襲来時には、すぐにまた抗体を作り上げて対抗する、そんな反応が獲得免疫です。しかも、二度目以降は倍返しではありませんが、初回よりも大量の抗体を一気に作ってしまえるようにしておきます。そのためにも、初回の感染時に獲得免疫の体制を作っておかなければなりません。

サイトカインはこの辺りの事にも働きかけを行います。免疫反応の方でも抗体の産生に深く関わるリンパ球(B細胞やT細胞と呼ばれるもの)を活性化します。こういった一連の流れをスムーズに行う事で、より強力で特異的な免疫反応が作り上げられていくのですね。

ただ、何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」と言われるように、過剰になってはいけません。ここで言えば、サイトカインが暴走してしまう状態です。先に書いた通り、炎症を引き起こすサイトカインと抗炎症性(炎症を抑制する働きを持つ)サイトカインとのバランスで免疫反応や炎症反応が成り立っていますので、このバランスが崩れてしまったらサイトカインの暴走が起きてしまいます。以前の回で書いた「サイトカインストーム」と呼ばれる状態です。

サイトカインストームが起きると免疫反応も暴走し始めます。感染を起こした病原体をやっつけるのみならず、自身の組織にも攻撃をするといった不具合を引き起こしてしまいます。もちろん、炎症は止まりません。感染症の重症化で死亡に至る例の中には、このサイトカインストームが起きているのではないかと言われる症例も数多くあるのだとか。この辺りは歴史の中の人物でも起きていたと考えられる例があるそうです。このサイトカインストーム、状態が進んでしまうと臓器不全にも至ることのあるのだとか。

ふと思ったのですが、炎症性サイトカインが暴走すればサイトカインストームになる可能性が高くなりますが、抗炎症性サイトカインの方が暴走したらどうなるのでしょうか。炎症が起きにくくなって、免疫反応を担当する細胞もうまく機能しなくなるのでしょうか。どのような状態になるのか、知っている人がいたら教えてください。


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