高感度CRPという検査項目
5、高感度CRPという検査項目
前回は医療機関で良く用いられる、炎症を知るための指標になる検査項目「CRP」の話でしたが、今回はその続きです。
むかし、といっても40年余り前のことですが、前回書いたように当時は結果が出るまでに一晩かかる検査でした。しかし、科学の進歩は目覚ましいものがあります。やがて分析装置で検査できるような測定法が開発され、実用化されました。それもまた40年ほど前の話です。私が医療機関で仕事をするようになって、比較的早い時期に出てきた検査方法だという事になりますね。
新しい方法で測定する検査項目は、それまでのモノとは違うという意味で「高感度CRP」という名称になっていました。それまでは陰性か陽性か、陽性ならどれくらいの量かといった具合に「マイナス」「ワンプラス」「ツープラス」・・・、そんな報告の仕方だったと記憶しています。
それに対して、新しい方法は〇〇mg/dl(〇〇ミリグラム)というように、数値で報告できるようになります。当然ですが、こちらの方が変化を捉えたりする上でも有用だと分かりますよね。
加えて、検査部門がある医療機関であれば所有しているであろう分析装置で測定できるわけですから、採血をしてから結果報告までにかかる時間も、大幅に短縮できるようになります。
それでも、当時は採血をした血液をその日のうちに測定するということは、あまり普及していませんでした(もちろん、大きな医療機関は別です)。もしすぐに検査をする場合は、緊急割込みといった処理をすることになるのが一般的だったと思います。
やがて、とにかく30分程度で報告しようという動きが出てきます。そして現在では、検査部門に届いた順にすぐに処理をしていくというように変わってきています。これも世の移り変わりを反映しているのでしょうね。それまでののんびりとした測定方法は消えてしまい、高感度CRPとう方法に置き換わっています。今ではこちらの方が当たり前になっているので、もはや誰も「高感度」という言葉など使わなくなっています。
ところが、このCRPという検査で首をかしげることも出て来ます。例えば虫歯。CRPの測定がどんどん精密になった結果、それまであまり考えたことが無かったような時にも、CRPが上昇してくることが分かってきたんです。
虫歯は口腔内の感染症といった感じの疾患です。当然ですが、感染症ですから炎症が起きます。それが理由です。同じ理由で、全身のいろいろなところで炎症とはあまり認識されていなかったような状態でも、CRPの数値が上がってくることが知られるようになってきます。
動脈硬化などもその例ですが、あまり炎症という感じが無いかもしれません。しかし、このシリーズの最初に「炎症とは、何らかの原因で身体に異変が起きる時に現れる状態を指す」と書きましたよね。つまり、動脈硬化は本来の血管の状態とは違ってくるわけですから、異変が起きている事には違いないわけです。ただ、原因として細菌やウイルスなどの微生物による場合は解り易いというだけなんですね。
現在用いられているCRPは、単に炎症を知るというだけではなく、将来の危険を予知するような意味合いも含めた検査として行われているということです。