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肝機能検査、PTの話

何の略で何の検査?

医療の世界では、ずいぶんいろいろとややこしい話題が出てきます。同じ言葉でも大文字か小文字かで全く意味が違うものがあったり、言葉も同じで読み方も表記も同じなのに分野が違うと全く意味が異なってくる、そんな例もたくさん出てきます。中には、20ほどの分野で使われているような言葉さえあると聞きます。

PTもそんな言葉の一つです。病院の中の職種や介護の世界の人はPTと聞けば「理学療法士さん」のことだと思うでしょう。同じ病院の中で仕事をしていても臨床検査との関わりが深い人であれば「プロトロンビン時間」だと答えるのが一般的です。

このプロトロンビン時間とはいったいどんな時間なのでしょうか。

血液は血管を流れている間、通常なら絶対に固まる(凝固する)ことはありません。しかし、血管が破れて出血した場合は別です。その時は血液が凝固して、破れた血管の穴をふさぐ必要があります。そのために、血液の中には常に凝固因子と呼ばれる複数の物質が溶け込んで流れています。その凝固因子を消費することで血液が凝固、つまり固まるのですが、この凝固因子の多くはたんぱく質で出来ており、そのほとんどが肝臓で作られているんです。

ですから、肝硬変のように重い肝臓病になると肝機能が大きく低下しますから、たんぱく質の合成が出来なくなります。そのため凝固因子も同じく合成できる量が減ってくるので、血液が固まりにくくなります。ということは、血液中の特定のたんぱく質(この場合は凝固因子)を調べることで、これまでに書いてきたAST、ALT、GGTといった血液中の酵素とは違った意味での肝臓の機能を知ることができるという事が分かります。

PTはそんな項目の一つなんです。

どんな時間を測るのか

PTはプロトロンビン時間の意味ですが、何の時間を測るのでしょうか。ごく簡単に言ってしまえば、血液が凝固するまでにかかる時間を測定しているという事です。PTの場合は基準値が10秒程度と非常に短い検査です。現在は機械で測定することができるようになりましたが、昔は担当者が1件ずつ手動で検査を行なっていました。そのため、ある程度の誤差は仕方がなかったのですが、ベテランの技師が行えば誤差が0.2秒以内という、非常に高い精度で測定結果を出していたのを覚えています。そのかわり、検査中はその人が怖くて近づけなかった・・・。

それはともかく、血液が凝固するまでの時間を測定することで、時間が延長していれば異常として判定されます。検査を行う目的や理由は大きく分けて4つほど。
①肝臓の合成能力が落ちていれば延長する
 すなわち肝機能低下
②血管の中で凝固因子が消費されていれば延長する
 血管内で凝固があるかどうか
③血栓の予防としてワーファリンという薬剤を使っている
 その量や効き具合のチェック
④手術前に行なう確認
 術後にキチンと止血するかどうか

注意すること

上記のような目的で検査を行ないます。ただ、凝固因子は先に書いた通り複数存在していますので、どれに問題があるかということはこの検査だけでは分かりません。このため、同じような検査をいくつか組み合わせてみたりする必要も出てきます。

それから、肝機能の中の合成能力を判断する検査と書きましたが、それだけならば他の血液検査でも調べることが出来ます。敢えてPTを選んているわけですから、いろいろな理由があるでしょう。合成能力だけであれば血液中のたんぱく質(例えばアルブミンなど)を調べても構わないわけです。ただ、アルブミンの場合は全身の栄養状態をモニターするといった意味合いが強いので、場合によってはふさわしくないかもしれません。栄養状態が悪くて材料不足になっていれば、合成能力に問題が無くても数値は悪くなりますから。

あと、最も大事なことですが、血液の凝固の具合を調べるわけですから、検査を行う前に既にある程度凝固が始まっていたりすれば、その血液は使えません。再度採血をやり直すことになります。採取に使う容器は、血液の凝固を止める水のような薬品が入った試験管を使用します。採取に使う容器を間違えたらアウト、間違えなくても採血後に薬品と血液との混和が上手くいかずに固まってしまったら、やっぱりアウトになります。

血液が入った容器で泡立つことが無いように注意しながら、ゆっくりと転倒混和します。水平にして転がすような混ぜ方をすると微妙に不均一な混ざり方になるので、検査結果が不安定になってしまいます。この点が、この検査を行う上での大きな落とし穴です。


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