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タリンブラックナイト映画祭、感動のクロージングセレモニー
11月23日土曜日 晴れ、のち雪
昨日日本映画の北浦兄弟ワールドプレミア上映会があったと思ったら、もう今日はタリンブラックナイト映画祭のクロージングセレモニーの日だ。気分的に忙しい。でも、せっかく日本から来てくれた辻野監督と中野プロデューサーが午前中暇だというので、市内観光に誘う。
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まずは旧市街のラッキー煙突掃除屋の像と自由の戦士記念碑の前を通り、キークインデキョク博物館に行く。ここには4つの塔を廻るツアーと地下道を巡るツアーがあり、両方行くと16€、学生割引で8€だ。チケットを買って、まずは塔ツアーに行く。中は結構広くて上り下りがあり、見応え十分。素敵な喫茶コーナーや見晴らしの良い休憩所などがある。地下道は以前にもきたが、結構長くてびっくりする。
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博物館を見終えて、タリンで人気のコーヒーチェーン、Reval Cafeの旧市街店に行ってコーヒーとパイ(のようなもの?)をたのむ。食べ応えがあって、お昼はこれで済ます。お二人とホテルまで一緒に帰り、そこから僕は今晩のクロージングセレモニー会場であるアレクセラコンサートホールに向かう。僕のようなゲストホストを含むスタッフには午後2時からリハーサルがあるのだ。会場のホールは結構大きくて綺麗。たかだか人口45万人の都市にあるホールとは思えないほどだ。今日の司会を務めるエストニア人俳優のパール・オヤが前列にいたので、隣に座りサインをもらう。気さくな良い人だった。
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1時間ほどの段取り説明が終わって、僕は一旦寮に帰る。そこでスーツに着替えて、降り頻る雪の中を寮からノルディックホテルフォーラムまで歩く。4時50分にタキシード姿の辻野監督と待ち合わせ、午後5時からホテルのラウンジでイタリア人映画ジャーナリストのインタビューに答える。5時半に中野プロデューサーともう一人、ドキュメンタリー映画Black Goldの杉本監督も合流し、4人でホテルからシャトルバスに乗ってクロージングセレモニー会場のコンサートホールに乗り込む。今日はアワードセレモニーも兼ねていて、僕が今回の映画祭でホストとして担当した2本の映画も何か賞を受賞しないかと期待している。
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セレモニー会場のアレクセナホールに着いて、ラウンジで少し飲みながら他の映画関係者たちと写真を撮ったり会話したりする。午後6時半のホール開場とともに中に入り、ホール中央の花道付近の審査員席のすぐ後ろ、ほぼ最前列の席に四人で座る。僕たちの後ろにはさっきラウンジで知り合ったモンゴル映画のグループが座っている。
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今日の司会のパール・オヤが出てきて、セレモニーが始まった。最初は子供向け映画部門の受賞作品とアワードの授与だ。小学生向け・中学生向け・高校生向けなど年代ごとに細かく分かれていてそれぞれに受賞作品がある。その次にドキュメンタリー部門。その監督賞やベストフィルムなどが発表された。そこで今日の日本チーム最初の受賞作品が出た。杉本監督のBlack Goldがドキュメンタリー映画部門特別賞を受賞した。白黒の映像と会話や音楽を極力少なくしたミニマリスティックな音響に、俳句のような短い詩を散りばめた演出が評価されたのだ。僕もプレミア上映を杉本監督とともに観たが、素晴らしい作品で観客からの反応も良かった。監督の受賞スピーチには僕も一緒に壇上に登ったが、特にすることもなく司会のパールと言葉を交わしたくらいだった。杉本監督、おめでとうございます。
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その後はバルティック映画部門やヨーロッパ映画部門などの受賞作品が次々と発表され、そのたびに会場のそこかしこから歓声が上がる。さあ、次は批評家選出部門の受賞作品の発表だ。と思ったらいきなりこの部門のベストフィルムに北浦兄弟が選ばれた!この部門の最高の栄誉を受けに、辻野監督と中野プロデューサーが壇上に進み、僕も通訳のために彼らに続く。彼らの最高のメッセージ、「愛してます、エストニア」を僕が「I love you, Estonia」と大声で通訳し、大いに会場が沸いた。辻野監督、中野プロデューサー、おめでとうございます。結局僕が担当した日本人監督の映画は2本とも受賞し、一緒に座っていた僕たち4人にとって素晴らしい映画祭になった。
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その後も他部門の受賞作品の発表が続く。最後の最後に発表された本映画祭最高の栄誉、グランプリはなんと、授賞式直前に友達になったモンゴルチームの映画、Silent City Driverが獲得した。さらに観客選出の人気作品賞はインドのPyreが受賞した。ヨーロッパのタリンブラックナイト映画祭でアジア勢大活躍だ。セレモニーは無事終了し、最後に受賞作品関係者みんなで記念写真撮影。そこからは3階のラウンジで打ち上げパーティ、さらに地下のパーキングスペースをディスコに換えての二次会ダンスパーティ。そこで踊り続けている杉本監督をそのまま残して、僕は北浦兄弟チームの辻野監督と中野プロデューサーと一緒に歩いて旧市街まで戻り、馴染みのバーShimoでさらに延々と受賞の感動や決定の要因、これからの活動のことなどを話し続けた。結局午前3時近くまで受賞の余韻に浸り、明日の再会を約束してこの日はホテルで別れた。
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