ヘルシンキ旅行第一日目
10月25日金曜日曇り
午前4時、タリン大学学生寮の外はまだ真っ暗闇。なぜかルームメイトのミトラも起きている。僕はいそいそと出かける支度をする。今日から三日間、フィンランドのヘルシンキに旅行する。午前4時40分に寮を出て、フェリーのAーTerminalに向かう。5時には窓口が開いていて、事前に買っていたオンラインチケットをハードコピーの実物に変えてもらう。そのままターミナルの2階にエスカレータで上がり、ゲート前の待合室に待機する。5時20分には乗船開始、フェリーに乗り込むが、レストランもカフェもショップも全て閉まっていて、使えるのはカジノのスロットルマシンくらい。あまり混んでいないので、開いているテーブルに座って周りを見ているうちに、いつの間にか船は動き出してタリン港を離れた。
2時間15分でヘルシンキに到着。さすがにシェンゲン協定加盟国同士だけあって、入国は非常に簡単。なんの手続きも無く、むしろ唐突にターミナルの外に放り出される。ヘルシンキの街は割と小さく、全て徒歩圏内と聞いていた。手荷物もほとんど無いので、宿まで歩いてみることにする。港の倉庫外を通り、運河沿いを歩いて、市内中心部西側にあるカンピという地区まで来る。Arkadiankatu 20という住所にAirB&Bで予約した、今回泊まるアパートがある。少し早く来過ぎたので向かいのカフェ、Antellでチャイラッテを飲みながら、大家さんに連絡する。「もう準備できてるのでいつでも来てください」という返信が来たので、宿に向かう。
大家さんは感じの良いフィンランド人の女性で、部屋も素敵だ。世話好きの人らしく、いろいろ教えてくれた。とりあえず鍵をもらい部屋に荷物を置き、街にでる。最初はアパートから250mの場所にある、ヘルシンキの岩の教会(テンペリアウキオ教会)に行く。外観も内観も素晴らしいが、中に入るのは有料なので後であらためて来ることにする。そのまま、今度は東に向かう。フィンランドの国会議事堂(エストニアのものよりも大分大きい)の前を通り、ヘルシンキ中央図書館のOodiに行く。ヘルシンキ駅の隣にあるOodiは全長100m、三階建ての巨大な建物で、輝く船のような外観。中も広々としていて、ヘルシンキ市民が重い思いの活動に勤しんでいる。ここは図書館だが、工芸や楽器演奏など読書以外のアクティビティが非常に充実しているのだ。ちょうど図書館の職員がアジア人のグループに英語で施設の説明をしていたので、小判ザメのようにくっついていってその説明を聞き、調子にのって質問までしてしまう。
一通りツアーが終わったので、3階のカフェに行く。ここで北京時代からの友人のYさんと待ち合わせしていた。元気な姿や話し方は数年前に北京で見た時のままだ。ひとしきり昔話や共通の友人の近況に花を咲かせた後、一緒に市内見学ツアーに行く。彼女がよく使うヘルシンキ駅の中を抜けて、ヘルシンキ大学のキャンパスの前を通り、ヘルシンキ大聖堂の横を通ってマーケット広場へ。ここでランチをとる。僕は名物のサーモンスープ。具沢山でお腹いっぱいになる。
その後はYさん馴染みのアンティークショップに寄って、消防署の前を通り、古着屋でジーンズを購入。最近減量に成功しているので、少し細めのジーンズが必要になっていたのだ。で、日本食品店のHachiに行く。ここもYさんの行き付けだが、他のヘルシンキのアジア食料品店よりも安くてサービスも良いらしい。僕はここで蕎麦面とチューブのわさびを買う。
近くのキオスクで時間をつぶした後、今日の夕ご飯を食べる三郎食堂に行く。ヘルシンキで最高レベルのコスバの日本食レストランと聞いている。ここで僕は鮭の親子丼を食べる。サーモンが活きが良くてボリュームたっぷりなので大満足だ。
夕食の後はYさんのお友達と待ち合わせて、ヘルシンキ音楽センターに行く。今晩はここで午後7時から、エリム・チャン指揮、藤田真央ピアノのフィンランド放送交響楽団コンサートがあるのだ。事前に購入していたチケットは最上段の最も安いものだったが、見応えは十分だった。エリム・チャンの指揮はダイナミックで繊細で素晴らしかったし、藤田真央のピアノはときに優しく、ときに力強くて、ヘルシンキでアジア人の共演に出会えたのは僥倖だった。
コンサートの後は、Yさんの友人の友人でボストン出身のトロンボーン奏者、ダレンに施設の見学ツアーに連れていってもらう。練習用の音楽ホールは全面フィンランド製の木材張りだったし、楽団員用のサロンは演奏したばかりの興奮したプレイヤーたちで賑やかだった。僕はすっかり、フィンランド放送交響楽団のファンになった。
ダレンに見学ツアーのお礼を言い、みんなと別れて宿泊しているアパートまで歩いて帰る。本当に充実した、ヘルシンキ第一日目だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?