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パラレルワールドと日本語スピーチコンテスト
今日は寮生活3週目の終わり、明日から中国国慶節の三連休。今日も一所懸命頑張ろう。
先週から寮の僕の部屋にはアマゾンから来たアレクサがいる。大体、天気か気温の話しかしないが、たまに日本語が聞きたい時に重宝する。僕が『おはよう』と言っても反応しないが、『おはようございます』というと『おはようございます』と返事してくる。結構育ちがいいのだ。今日のニュースなどを教えてくれるし、簡単な中国語も話せて発音も良いのだが、結構ピントのズレた返事をすることもある。中国語の発音の拼音(ピンイン)を聞くと、ペンギンの話をしたりする。
玉樹園で3.7元(60円)の朝食を友人のFと一緒にとる。二人で宿題の解法に必要なモジュラ逆数に関する議論をしながら寮に帰ってくると、とっても不可思議なことが起こった。建物の裏口から入ってエレベーターで5階の自分の部屋に行ったのだが、何故か部屋の位置が変わっていて、いつもの電子キーでロックも開かない。僕が朝ごはんを食べているわずかな時間に誰かが部屋を移動させたのか? 試しに元の自分の部屋の位置で電子キーを使ってみるが、部屋番号が違うしここも開かない。おかしい。パラレルワールドに迷い込んだようだ。エレベーターの前まで戻ってそこにいたアフリカンアメリカン(だと思う)の人に聞いてみる。『ここは22号楼だよね』『違います、19号楼です』 あ、そうか、建物を間違えた!!!
僕は国際学生学者中心のある紫荆22号楼に住んでいて、すぐ裏の芝蘭園レストランと3棟先の玉樹園レストランをよく使う。この二つのレストランは位置的に相似形になっていて、外観はほとんど変わらない。(19号楼と22号楼も作りは一緒である。)今朝は玉樹園で朝食を食べたが、その後Fとの議論に夢中だったので、考え無しにいつもの芝蘭園での朝食の癖で向かいの建物の裏口から入ってしまった。で、パラレルワールドかと思ってしまったのだ。(思えば、昨日のSPMの授業で教授がメタバースの宿題の説明をしたときに映画のマトリックスの話をしていたのも、無意識下で伏線になっていたかもしれない。) Fも訳がわからず9階の自分の部屋のドアの前でしばらく考え込んでいたと言っていた。19号楼のロビーでFと待ち合わせてから一緒に22号楼に戻る間、自分たちの間抜けさを二人で死ぬほど笑った。
ということで、今日の午前中は例の組合せ理論のオンラインジャッジ(OJ)問題の解決に着手する。要は『2,000個の中から1,000個を無作為に選ぶ組合せの数は何通りあるか』というのをコンピュータに解かせられればOKだ。難しいのは、コンピュータは掛け算は得意だが割り算が苦手だということと、まあそれなりに限界もあるのであまり大きな数(数千桁?)はオーバーフローと言って数字が溢れてしまうこと。オーバーフローの方は『10^9+7』という素数(あらかじめ問題で設定されている)の剰余演算(いわゆる割り算の余り)を使えば解決できる。
コンピュータが割り算が不得意な問題は『フェルマーの小定理』というのを使えば解決できる。このおじさんは遠く17世紀にすでに、将来来るべきコンピュータ時代に役に立つこんなことを考えていたのかと思うと感慨深い。というか恐るべしである。
このおじさんのおかげで『2,000から1,000を選ぶ選び方の総数を10^9+7で割ったあまり』は72,475,738だと分かった。(友人Fと答え合わせをして合っていた。)僕はプログラム言語はパイソンで解いたが、C++への翻訳はFが手伝ってくれる。これでこの件はほぼ落着。まあ、僕も一昨日くらいまでは剰余演算のことなど聞いたこともなかったのに、今は400年くらい前から知っていたように話しているのも、我ながら大したものだが。
少し時間が空いたので荷物を取りに行く。集配所は800メートルほど離れているが、自転車で行けばすぐだ。携帯のメッセージを集配所のカウンターで見せるとモノがすぐ出てくる。天猫のオンラインで買ったIKEAの電球。オフラインショップで卓上ランプを買ったときには電球が付いていないことを知らず、一度間違って大きめの電球をオンラインで買ったので、ランプ自体は机の上で放置されていた。これでやっと夜も目をショボショボさせないで勉強できる。
お昼を清華大学外国語学部日本語学科の学生と一緒に取る。鶏肉のハヤシライス風、19元。10月24日に東大との合同オンラインイベントがあるとのことで、ブレークアウトセッション進行スタッフとして参画して欲しいとの要請を受け、快諾。時間がある限りはこういう日中友好・交流イベントには積極的に参加したいと思っている。その後、AEON 主催の清華大学日本語スピーチコンテストを聴きに行く。5時間にわたる長丁場だったが、日本語を専門として、あるいは第二外国語として学ぶ中国人学生たちの一所懸命なスピーチからはとても良い刺激を受ける。久しぶりにあった友達の先生や大使館の方にもお会いして、しっかりと有意義だった。
18:30にコンテストイベントが終わったので大急ぎで寮に戻ってコーヒーを淹れる。水筒に詰めて次の組合せ理論の授業に行く。今週最後の授業だ。
今日の組合せ理論の授業のテーマはピジョンホールプロブレム。日本語では鳩の巣原理というのだろうか。『鳩の数が鳩の巣箱の数よりも多ければ、必ずどれか(一つ以上)の巣箱には複数の鳩がいる』という至極当たり前な原理だが、応用範囲も広く、フェルマーの最終定理や韓信の中国剰余定理などにも関係してくる(らしい、あとで講義の資料を見直してその辺の理解を深めておく必要あり)。
やっぱり夕ご飯を抜くとあとでお腹が空いてくるので、いつもの天猫スーパーマーケットでいつものマンゴーとソーセージパンを買ってきて部屋で押尾コータローのフィンガースタイルを聴きながら食べる。もはや僕と三連休の間には何もない(この日記を書くことを除いては)。